2014年九州吹奏楽コンクール高校の部

昨日の中学の部に引き続いて、高校の部を聞いてきました。天気が持ったのは、何よりです。
では、代表団体の感想などを。

精華女子高校
音楽を奏でる最大の目的は、おそらく聞く側であるオーディエンスを熱狂させたり、涙腺を刺激したり、日々に疲れた心の琴線に触れたり、そういう、人の心にどれだけ響くか、と言うところにあるはずです。この日の精華女子校の音楽は、その音楽の語りかけ働きかけを多くの、会場から溢れんばかりの人々にもたらしていました。心が動けば、12分間がいかに短い時間なのか、そこにいるほぼ全ての人々が感じたはずです。九州大会では、珍しい満点獲得の金賞代表。この日に乱発された金賞の中でも、最も輝かしいグランプリを、精華の奏者たちは、観客からの止まらない拍手喝采から感じ取ったことでしょう。音楽の輪郭から内声部のハーモニーに至るまで、隅々に手の行き届いた課題曲と、繊細さと発奮度が同居した華麗なる舞曲は、まさに、至極の12分間。更に精度を高めて、今年も次なる頂点を目指して頂きましょう!

玉名女子高校
実に艶やかなサウンドで課題曲4番がスタートしました。数年前からすると、華麗なるサウンドの転身と言った趣です。そして、一つ一つの音楽の輪郭を、丁寧に紡いでいく、そんなマーチでした。ただ、輪郭に時間をかけすぎたのか、内声部の動きを上手く生かせず、音楽がやや平面的になってしまっていたのが残念。自由曲においても同様で、劇的な中にも、より繊細な音楽の組み立てが求められるところです。

福岡工業大学附属城東高校
ハイスピードでスタートした課題曲は、個々の高い技術と、豊麗なサウンドを魅せるのに成功していましたが、細かい要素がやや埋れてしまう部分や音楽がバラけてしまう部分が散見されたのは惜しいところ。自由曲は、冒頭部分でやや繊細さを欠く部分がみられ、楽曲のもつ緊張感が維持できなかったのが惜しまれます。中盤以降、クライマックスに向けての演出はお見事でこのバンドの本領発揮といったところでしょう。ただ、ラストは更に明るいサウンドも個人的には欲しかったところです。

続いて、金賞団体の中で、印象に残った団体を。

鹿児島情報高校は、指揮者が神様から交代し注目を集めましたが、ダイナミックで重心を低く置いた品格のあるサウンドは健在でした。ただ、まだ指揮者とのコンビネーションに違和感があるのか、随所でアンサンブルに迷いがみられたのは残念です。

鹿児島県立松陽高校は、非常にシンフォニックで、繊細かつ流麗なサウンドは相変わらずで、出場全団体の中でも突出した質のいいサウンドを誇っています。がしかし、音楽のダイナミックレンジが狭く、自由曲終盤の、めくるめく音の万華鏡が、ステージ上で完結してしまっていました。課題曲の仕上がり具合が非常に良かっただけに、残念!

出水中央高校は、去年今年と毎年指揮者が変わりましたが、骨太いミスのないサウンドと技術力は健在です。今回は課題曲自由曲ともに、音楽が塊となって進んで行く感じで、細かいニュアンスやバランスの妙が聞かれなかったのが残念でした。

佐賀学園は、九州の高校では珍しく課題曲5番にチャレンジし続けるバンド。サウンドも非常にバランスが取れていて、聞きやすい音楽を作りあげてきますが、今回はサウンド音楽ともにややバラけてしまった印象で、全体を通してサウンドに芯が備われば、音楽がが飛躍的に上質なものになると思います。

沖縄勢は、トップバッターの那覇高校が、前日の中学と比較すると圧倒的にボリューム感のあるサンドを聞かせましたが、終始すべての楽器が奈良市続けている感じで、メリハリがつかなかったのが残念でした。昨年代表のコザ高校は、変わらず煌びやかなブラスサウンドを聞かせていましたが、木管のソロなどで、ピッチが不安定になるのが気になりました。

その他、衝撃の精華の後に登場した熊本高校は、まろやかなサウンドと丁寧な音楽作りが高感度大で、続く熊本北高校は、おおらかに歌い上げたトスカが圧巻でした。サウンドのバランスも素晴らしかったと思います。
また、宇宙の音楽にチャレンジした都城商は、ややミスも垣間見られましたが、とくにハルモニアからフィナーレに向けての集中度が、会場の喝采を浴びていました。
アンコンで実績を積み上げている飯塚高校は、音色の美しさを維持しながらもアグレッシブにルイプルを聞かせ、聴衆をノックアウト。
少人数の福岡第一高校は、軽業師のように、めくるめく音楽の世界を具現化して、オーディエンスのため息を誘っていました。

さ、こうして中学高校共に今年は金賞乱発となった九州大会ですが、審査自体は相対的に評価されながら、結果は絶対評価にするという今のスタイルの噛み合わなさは、もう限界に来てるのでは無いかと思われます。音楽の審査にベストというものは無いのでしょうが、在り方を真剣に考える時期に来てるのではないでしょうか。
もう一点。今回のホール、グランシアタは、ステージの段階でサウンドが約1.5倍ほど増幅する響きを持っています。そういう意味で、そのバンド本来のサウンドとは異なるものが客席に飛んでくるホールです。つまり、コンクール向きではないホールと言えるでしょう。そして来年も、熊本県劇という、これまたサウンドにプラスαが加味されるホール。さ、どんな事が起こりますことやら。楽しみにしていたいと思います。