2012年吹奏楽コンクール鹿児島県大会中学の部

25日からスタートした2012年吹奏楽コンクール鹿児島県大会。
中学の部の3日目から4日目の午前中まで聞かせていただきました。
ここ数年、九州大会で低迷気味の鹿児島勢ですが、今年はその鬱憤を晴らそうという意気込みが伝わってきた2日間でした。
熱演の中、見事に代表権を獲得したのは、出演順に姶良市重富中学校鹿児島市立伊敷台中学校、そして鹿児島市立谷山中学校でした。

では、代表校の感想なと。まずは、重富中学校
現在、伊敷台中学校を指導していらっしゃる坂下先生の時代に全国大会に駒を進め、九州大会にも何度も出場している学校です。今回の先生が赴任してから初の代表となりました。課題曲2番の冒頭は、やや焦り気味なイントロでしたが、主題が始まると、存在感のある主旋律の提示が心地よいマーチになりました。管楽器と打楽器のバランスも絶妙で、大きく彩られた音楽作りが印象的でした。ただ、全体を通して、サウンドに更に艶が欲しいところで、ひとりひとりが自分の音にいかに表情を乗せることが出来るか、それだけで音楽は飛躍的に変化するはずです。特に終盤、たたみかけるように出てくる大きな動きの旋律を、更に大きく美しく奏でてもらいたいものです。一方自由曲の復興は、仕上げの段階までもうひと頑張りという感じで、前半部分は、それぞれの音の素材がどうひとつの楽曲に組み合わさって行くのかの理解度が奏者によってまだまだバラバラだったようです。ひとつひとつの音符すべてに意味があることを、アナリーゼを重ねながら話し合う機会も必要でしょう。しかしさすがに伝統校、奏者の技術力はすばらしく、これからの短期間で、更なる成長を遂げてくるに違いありません。

続いて、伊敷台中学校
まずは冒頭のタムのチューニングが楽曲によくマッチしていました。ひとつ間違えば、安っぽいポップスサウンドになってしまう中で、よく研究されていたと思います。ただ、管楽器が登場して来ると、時に打楽器のバランスが過多になってしまう部分もあり、管楽器の旋律を邪魔しない絶妙なバランス取りを秒刻みでやって欲しいところです。管楽器のサウンドは場面場面でさまざまな色合いを演出していて、音楽の変化が楽しめる演奏でした。そんな中で、中間部の終了部、やや気が緩んでしまったでしょうか。またその後の低音楽器もより明確な音の動きを聞かせたいところです。終盤も、打楽器とのバランスがうまくいけば、更に感銘度はあがる事でしょう。さて、自由曲はこれまでの路線から脱却して一気に勝負に出てきたという感じでしょうか。ただ課題曲に比べると、左右の楽器が微妙にズレる箇所が散見されました。そこがしっかりと合わさってくると、細かいフレーズも更に浮き立って聞こえてくるはずです。短い期間ですが、このバンドなら容易に解決出来る問題点でしょう。しかし、全体を通しての大きな音楽のうねりはこの指揮者と奏者だからなし得る美技。細かい事を忘れさせる音楽作りでしたが、更に上の段階を目指すために、取り組んで欲しい課題です。

そして谷山中学校
去年はなぜか代表を逃してしまったこの学校ですが、今年は正攻法で難なく代表に復帰しました。課題曲は、基本に忠実なマーチが心地よく、管楽器のバランスも打楽器とのバランスも過不足なく安心して聞ける演奏でした。しかし、その分ややメリハリに欠けていたのも事実で、より細かい音楽的な表現で更に完成度を高めて欲しいものです。また時おりわずかな発音ミスも散見されましたが、この辺は更に辛抱強く修正したいところです。自由曲は昨年に続いてスパーク作品の、ウィークエンド・イン・ニューヨーク。非常に肉厚な谷山サウンドにマッチした選曲でした。しかし、特に前半、音楽が不明瞭になる部分があり、譜面に頼るのではなく、譜面を料がするぐらいの気構えで、整理された展開を聞かせてほしいところです。またスウィングになるところでは、ジャズ特有のブラスセクションの表現力も期待したいところ。みんなでビッグバンドの演奏を聞きながら、その奏法を勉強して取り入れてみるのも手でしょう。今回はウィークエンド・イン・六本木ぐらいまで来た感じでしたが、九州大会までにニューヨークに辿り着けるか、期待したいところです。

というわけで、今年の鹿児島県代表はこの3校に決まりました。それぞれに、強烈な個性を持った3団体。今年は、鹿児島の中学校の存在感を思う存分アピールしてくれると思います。また、私が聞いた感じでは、この3校が突出した技術と音楽を奏でていたのが印象的で、特に、安定したハーモニーの美しさが際立っていました。サンパレスでは自信と誇りを持って、揺るぎないサウンドと音楽を聞かせてくれる事を期待したいところです。

そのほか、2日間の中では、女性指揮者ならではの安定感を持った、舞鶴中、西陵中、鹿児島南中、また男性指揮者ならではのダイナミックな音楽作りが印象的だった東谷山中と鹿屋東中の演奏が印象に残りました。これらの学校と代表校との大きな差は、サウンドの艶、弱奏時のハーモニーのクリアさと安定感、ダイナミックな音楽作り、だったでしょうか。
聞けなかった日にも、素晴らしい演奏はたくさんあったと思います。代表校に肉薄する学校が来年また更に登場して来る事を期待したいと思います。