川越奏和奏友会吹奏楽団 第31回定期演奏会

blueoceans122007-07-01

このところ、毎週日曜日はどこかの演奏会に出かけているが、今日は、友人がメンバーの一人となっている、川越奏和奏友会吹奏楽団、第31回定期演奏会に足を運んだ。
この楽団の演奏会に出かけるのは、初めて。川越市を訪れるのは、これで二度目となる。
川越奏和奏友会吹奏楽団は、一般吹奏楽団の東の雄のひとつで、私としては、東北の秋田吹奏楽団と共に、フェイバリット・バンドのひとつである。

さて、今回のコンサートは「クラシック・コンサート」銘打たれていた。
いろんな意味でのクラシックなのだろう。というわけで、最初のプログラムから楽しみにしていたのだが、電車移動がまだ不慣れなために、目測を誤り、会場についたのが、開演5分。
ぜひとも聞きたかった「シンフォニア・ノビリッシマ」がスタートした後だった、残念。
しかし、ロビーのスピーカーでなんとかキャッチ。
この曲を良く聞いた頃の70年代の解釈とはまったく異なった、よりシンフォニックな音楽作りはさすが。エンディングの和音のバランスの採り方も「なるほど」とうならせるものがあた。しかし、ちゃんと会場の中で聞きたかった。

そして、1曲目が終わり、客席へ。続いての曲は、邦人作品。清水大輔作曲のI will...〜for Wind Ensemble〜。
なぜこの曲が今日のプログラムに加わったのかは不明だが、内声部の音の重なり方やうねりに特徴を持つ曲である。ともすれば、上下のサウンドに埋もれそうになる内声部をしっかりと存在感を持って浮き立たせる技術とセンスは、さすが、コンクール常勝バンドならではの解釈と提示である。

そして第一部最後を飾ったのは、これも懐かしい、ロジャー・ニクソンの太平洋の祭り。70年代当時は「平和の祭り」という訳のタイトルで知られていた曲だ。
この曲の冒頭を聞いた瞬間に感じたのは、「ここ30年ほどで、吹奏楽オーケストレーションは飛躍的に進歩したな」ということ。というのも、このバンドのサウンドを持ってしても、前半部分はかなりスカスカになって聞こえて来たのである。
また音楽的なバランスというか、解釈についても、この曲に関しては、私的には「どうかな?」と思うものであったのも確か。しかし中盤から終盤にかけての緊張感の維持と疾走感の演出はさすがのもの。ある意味体力を使うこの曲を、大人たちがよくがんばったな・・・・なんて僭越ながら感じたのだった。

さて、20分の休憩をはさんで、後半は天野正道氏とのコラボレーション。まずは、三善晃作曲の「竹取物語吹奏楽版からスタート。天野氏のオーケストレーションの素晴らしさは周知の通りだが、この楽曲でもそれは、充分に発揮されていた。奇しくもこの曲を秋田吹奏楽団が取り上げるのでは・・・・と聞いたが、本当のところはどうなんだろう・・・・。

続いては、新たな試みと発表された、ラベルの「左手のためのピアノ協奏曲ニ長調」。ピアノを前面に出すというのではなく、吹奏楽器でさまざまな楽曲のサウンドを再現しようというところが新たな・・・・ということなのだろう。
今回の試みが動向というのは抜きにして、こうした演奏会の場で、トップに君臨するバンドが新たな試みにチャレンジしていくという姿勢は非常に素晴らしいと思う。

そして、第二部最後は、天野氏作曲による、Cocertino for Soprano Saxophone,Alto Saxophone and Electric Guitar。もともとは、電子ギターと電子ヴァイオリンによるものだったそうだが、ヴァイオリニストがこれないということで、急遽サックスをそこに当てたそうだ。
この曲についても、もちろんチャレンジ精神は素晴らしいのだが、楽曲が、オランダのプログレグループ、フォーカス的な面を持っていたり、アニメの序曲的な部分があったり、突然ディープ・パープルになったりと、一貫性に欠けていたのが残念だった。また8ビートだったのも、このシンフォニックな編成ではいまひとつな印象。
サウンドの妙は素晴らしかったが、こういうスタイルの楽曲については、研究の余地アリアリではないかとも思われたのは事実である。
まあでも、総じてチャレンジスピリットを非常に感じられたステージだったと言っていいだろう。
などと言いつつ、「言うは易し、やるは難し」。しかし、素直に感じた意見ではある。

さてさて、このバンドのセンスのよさが最大限に発揮されたのは、アンコールに今年の課題曲を持って来たという部分。
これには会場に訪れた中高生は感激したことだろう。
演奏も、特に3番のマーチは、これまでに聴いてきた3番の中でも圧倒的に秀逸。少年少女の心を忘れていない大人のマーチという、非常に絶妙な解釈だったと思う。

そうそう、この課題曲の前に、ポップス版のボレロを披露。このバージョンは、いろんな一般バンドの演奏を聴いてきたが、今日の演奏が特にソリストの演奏は髄一。ひとりひとりが、腹筋を利かせた非常に厚みがありながらしんが通ったサウンドを持っていて、それが合奏になってさらにサウンドに厚みを拡がりをもたらせているのが非常によくわかった瞬間でもあった。

というわけで、これまで足を運ばなかったのを非常に後悔した定期演奏会であった。
できればこのような演奏会をもっと多くの人々に聞いて欲しいものだが、やはり会場の足回りの悪さも影響しているのだろうか。
私はこれを機会に、これから毎回足を運ぼうと思っている。そして、今年のコンクールでの演奏にも期待していたいと思う。