2009年東京都吹奏楽コンクール高校の部

各地区予選の最後を飾る東京大会を聞きに、普門館に足を運びました。
その中から金賞団体を中心に感想など。

まずは代表団体、東京都立片倉高等学校
都大会常連の指揮者が率いるこのバンド、当初は指揮者のオーバーアクションの方が目立っていた感がありましたが、ここ数年のサウンド面の飛躍的進歩には目を見張るものがあります。このバンドが選んだ課題曲3番は、各地でいまひとつ音がこもりがちで演奏効果を疑問視していた私にとって、目から鱗サウンドのクリアさで、課題曲冒頭を聞いた瞬間に私的には代表を確信しました。要所要所での縦の線の正確さと、情感溢れる横揺れとのコラボレーションは、この日の高校の全ての演奏の中でも群を抜いていました。自由曲は、指揮者の手慣れた中国の不思議な役人。指揮者が描いたスケッチ通りの緻密な音楽作りは、点数が伸びやすいこの曲にあって、後半の盛り上がりと共に審査員の脳内点数が鰻の上りになって行ったのは想像に難くありません。ただ、個人的には2009年ならではの斬新な解釈が見られなかったのが少々残念でした。全国大会では、このレベルの高いコラボレーションをベースに、素晴らしい音楽的なサプライズを見せてくれるのを楽しみにしていたいと思います。いずれにしても、文句なしの代表権獲得でした。

そしてもう1つの代表団体は、駒澤大学高等学校
80年代からたびたび全国大会に出場している常連校ですね。ここ数年はややサウンドが縮こまった感があったりなどして、代表から遠ざかっていましたが、今年は予選から本選にかけての伸び率の高さに驚かされました。府中の森の予選の時も、非常に堅実で緻密な演奏を展開していましたが、ややブラスサウンドを中心に硬質な部分が見られたのも事実。しかし、この日の演奏は、木管のまろやかさと金管のきらびやかさが非常にうまくブレンドされた、往時のサウンドを彷彿とさせるものを感じさせてくれました。課題曲の冒頭こそ、やや過度の慎重さが感じられましたが、主題の提示以降のマーチの推進力や、主旋律と対旋律の絶妙なバランスなど、良い意味で非常にオーソドックスな音楽を展開していました。打楽器の配置も、心憎い演出。そして自由曲は、秘密兵器のくじゃく。駒澤のくじゃくは、2000年に全国大会で一位(上下カット前か後かのどちらかで)を取った組み合わせです。当時の記憶が、駒高サウンドを往時のものに昇華させてくれたのでしょうか。予選の時には見られなかった、骨太ながら艶のある木管の響きと、適度な艶とエッジをもった金管サウンドブレンドと、緻密なアンサンブルのコラボレーションは高校の部のトリを飾るに相応しい世界観を作り上げていました。全国大会では今回の結果を自信に変えて、更に中低域の充実したサウンドで、その存在感をアピールしてもらいたいものです。

さ、続いて金賞受賞校です。まずは、3出明けとなった東海大学付属高輪台高等学校
予選の時にも感じた事ですが、全体的にサウンドに艶が感じられず、そのためか金管木管ブレンド感が感じられなかったのに、まずは驚きを感じました。1年間のお休みの間に何らかの歯車が狂ってしまったのでしょうか。個々の奏者の演奏技術の高さは相変わらず高いものを見せてくれましたが、バンドとしてのサウンドや音楽の一体感が最終段階にまで達していなかったのは残念でした。木管サウンドも、もっともっと骨太でかつ艶やかなものだったように記憶しているのですが・・・・。しかし、問題点がハッキリしている分、来年に向けての軌道修正はそう難しいものではないでしょう。次回はまたかつての王者のサウンドと演奏の妙味を聞かせて頂きたいものです。

もうひとつの金賞団体は、東京都立杉並高等学校
課題曲の冒頭から、サウンドの方向性がやや変わったかなという印象を持ちました。このバンドの木管サウンドは、他の追随を許さない骨太で暖かみを持った独特のものがありましたが、今年のサウンドは、やや金管サウンドに重心をずらしたのかな、という感じでした。サウンドの模索はバンドにとって非常に大切なものですが、今回の措置はこのバンドの個性を薄めてしまうものになったかなという印象も持ちました。しかし、特に自由曲のシンフォニーポエムにおける個々の奏者の技術力の高さと指揮者の音楽作りの緻密さは見事で、しばしコンクールを忘れて、音楽そのものの世界に浸らせて頂きました。このバンドのサウンドで課題曲5番を聞きたかったな・・・・と個人的に感じました。

以上が金賞団体の感想です。その他のバンドについては時間があれば追記します。
というわけで、今年の東京代表は以下の2団体に決定しています。

午前の部9番: 東京支部 東京都代表 東京都立片倉高等学校吹奏楽部 (指揮:馬場正英) 3休明け7回目
課題曲3:ネストリアン・モニュメント(平田智暁)
自由曲:バレエ音楽中国の不思議な役人」より(B.バルトーク/小澤俊朗)

午後の部13番: 東京支部 東京都代表 駒澤大学高等学校吹奏楽部 (指揮:吉野信行) 5年ぶり10回目
課題曲4:マーチ「青空と太陽」(藤代敏裕)
自由曲:ハンガリー民謡「くじゃく」による変奏曲(Z.コダーイ森田一浩)