2009年全日本吹奏楽コンクール大学の部

今年のコンクールもいよいよ最終コーナー。
週末は、全日本吹奏楽コンクール、大学の部と職場一般の部を聞きに、名古屋に行ってきました。
その中から、大学の部の感想を少々。

まずは、金賞団体。神奈川大学
今年は東関東大会も聞きましたが、課題曲5番は、地区大会では非常に安全運転な印象を持ったわけですが、全日本ではさすがにアグレッシブな部分も垣間見れる、メリハリのついた解釈でした。そして圧巻は自由曲。弱奏から入るマインドスケープでしたが、冒頭のパーカッション・アンサンブルから異次元空間を作り出すのに成功。その後も速いパッセージから中盤から終盤にかけての弱奏部分での異様なまでの美しさまで、多くの表情を持ったサウンドを駆使したゴシック画のような立体的な音空間は、更に進化を遂げたようです。弱奏に入る部分での若干の迷いだけが残念でしたが、文句のない快演でした。

続いて、駒澤大学
何年か前に重量級の高校バンドがこの会場で苦戦を強いられましたが、駒澤の課題曲4番も前半はそんな感じでいまひとつ流れに乗れない印象でした。が、ここからがこのバンドの強さで、会場の響きそのものをバンドのサウンドに変化させるようなパワーと、個々のパートがクリスタルの支柱のように客席に飛び込んでくる音圧が、会場の空気そのものをねじ伏せたような印象でした。特に自由曲「ダフニスとクロエ」の中盤以降のサウンド・コラージュは圧巻で、躍動感溢れる音楽を作り上げていたのに、非常に感銘を受けました。見事な横綱相撲だったと言えるでしょう。

そして、文教大学
昨年は、特に自由曲において、らしからぬ演奏をしてしまった感がありましたが、今年は課題曲の冒頭から自由曲の集結まで、一寸たりとも隙を見せない、高い技術力と豊富なバリエーションを持つサウンドのコラボレーションが見事でした。自由曲のラフマニノフ2番は、エリック・カルメンが借用した例の旋律からスタート。今年のコンクールはある意味ラフマニノフの当たり年ですね。その中でも文教の演奏は、2番のサンプラー的な役割を見事に果していました。見事な金賞復活です。

続いて銀賞団体について、ひとことふたこと・・・・

まずは福岡教育大学。
指揮は学生さんのようでしたが、演奏は、非常にまとまりのある、精巧なものでした。惜しむらくは、音量が全体を通して一定で、音楽的な抑揚に欠けていた事でしょうか。しかし、バンドをまとめあげて学生さん、グッジョブです。
続いて、近畿大学
ここ最近金賞に復活して安定するのかと思っていましたが、この日の演奏は、課題曲5番冒頭のパッセージから迷いが生じ、金管のミストーンも誘発して、安定感の無いものでした。自由曲はやや持ち直しましたが、課題曲からの動揺から立ち直ることが出来なかったのが残念でした。
続いて、北海道教育大学函館校
課題曲2番は非常にクリアに音楽を再現していましたが、課題曲自由曲を通じて、サウンドに変化がなく、カラーに乏しかったのが残念でした。
続いて、静岡大学
同じスコアでもこの指揮者が振ると、全く違ったサウンドに聞こえるのは、いつもながら興味をそそられます。しかし、全体的にアンサンブルに安定度を欠いていたようで、自由曲でも揃えるところはきっちりと揃えて欲しいな、という印象でした。金管楽器の息漏れもやや気になりました。
そして立命館大学
非常に演奏はよくこなしているという印象でしたが、全体を通してハーモニーが濁っていたのが残念。サウンドのカラーの統一性の問題なのか、ピッチの問題なのか・・・・改善の余地ありです。
最後に、東北福祉大学
非常にクリアなサウンドに好感が持てましたが、ややサウンドのバリエーションが乏しく、音楽的な幅が狭く感じられたのが残念でした。

という感じで、今年は金賞常連校3校が、アンサンブルの安定度、サウンドのバリエーション、音楽的なアピール度、いずれをとっても突出していたような印象を受けました。
銀賞団体にほぼ共通して感じられたのは、サウンドのバリエーションの乏しさでしょうか。高校バンドと一般バンドとの狭間で、いちばん難しい時期なのでしょうが、いろんな音楽に触れて、いろんな感情を体験して、音楽で感情を表現するバリエーションを、増やしていってほしいものです。