東京都高等学校奏楽コンクール

blueoceans122006-08-11

東京都高等学校吹奏楽コンクールというのは、東京都大会の予選で、高校Aの部は、4日間にわたって開催される。その中から、毎日3団体ずつ、合計12団体が、東京都大会に駒を進める。これまでは6団体だったが、今年から一気に倍に増えた。これで都大会の顔ぶれも多彩になるのかも知れない。

さて、仕事の都合で、今日の午後と、月曜日の午前中しか行けないと思うが、まずは今日の最終ブロックの中から、印象に残った団体を。

まずは、潤徳女子高等学校。ここは、以前に都大会に駒を進めた事もある学校で、非常に重厚なサウンドを持ったいいバンドである。まずは登場と同時に、グリーンのブレザーが非常に鮮やかだった。そしてサウンドはライト・グリーンというイメージよりは、モス・グリーンという感じか。中低域がしっかりとした、重量感のあるサウンドだ。しかし、そのサウンドがややもすると、音楽の進行を引っ張ってしまう部分が見られたのも事実で、もっともっとより多彩なサウンドを身につけてもらいたいなという印象を持った。特に課題曲2のイントロはやけに重々しく、ややこの楽曲のイメージから逸脱していた。また自由曲の交響的断章(ネリベル)においても、音楽で描くシーンが単一的であったのが残念。もっとアグレッシヴになってもいいのではないかと思われる。しかし、サウンドもさることながら、メンバー個々の技量も高く、しっかりと基礎が出来ている事を感じさせる演奏だった。

続いては創価高等学校。指揮者は、創価山梨吹奏楽団などを指揮していた方だと思われる。課題曲の冒頭から、コンクールをよく知っているなと思わせるサウンドからスタートするが、楽器によって技量に差があり、随所にほころびが見られたのが残念だった。しかし、音楽が前進して行く様の演出はさすがで、よく響く会場を意識した音楽作りに成功したようだ。自由曲のスペイン狂詩曲においても、やはり同じで、技術的な基礎作りやサウンド作りはこれからという感じだったが、全体としての音楽の流れの作り方は素晴らしく、細かいミスやほころびを充分に補って余るものがあった。これから急成長して行くバンドのひとつかも知れない。

そして、全国大会の常連、東海大学附属高輪高等学校。こちらはワインレッドのブレザーが、またまたまぶしい。さて、課題曲1は、さすがの解釈とさすがの演奏で、他を寄せつけないオーラを感じさせるものがあった。ひとつひとつの細かい要素やフレーズを的確に探し出して再現し、超人的なタンギングも軽々とこなす様は、積み重ねられてきた自信も後押ししているのだろう。ただ、場所によっては、もう少しオブラートに包んだ方が品があるのでは・・・という部分も感じられたが、それは贅沢なリクエストなのかも知れない。さて、自由曲は、ガイーヌから。そういえば、マシュアールウィンドオーケストラの自由曲もガイーヌだったような。それはいいとして、こうして自由曲まで聞いてくると、課題曲からず〜っとサウンドに変化がないのに気づいてしまう。ガイーヌは様々な民族の謡いの集まり。であるからには、それなりのシーンごとのサウンドの変化があってもいいのではないかと思ってしまうのである。しかし、それを補ってあまりある、絶妙にバランスの取れた音楽だったのも事実。

最後に、桜美林高等学校。本当は仕事の都合で聞けないはずだったが、ちょっと考え事をしている間に会場を出られず・・・・がしかし、それが幸運して、またひとつ、素晴らしい音楽に出会う事が出来た。課題曲1の登場感は素晴らしかったが、打楽器のアンサンブルから合奏部分に入ると、やや乱れが生じたり、ぎこちなかったりしてしまったのが残念。あと、音楽的音量的なバランスも、もっともっと入念に取ってもらいたいものだ。一方自由曲のキャンディードは、天真爛漫な演奏っぷりで、メンバー個々が真摯に音楽に取り組もうとしている姿勢が、痛いほど見て取れる演奏だった。その思いを忘れずに、より聞いてくれる人が喜んでくれる音楽とはどんなものなのか、また人を感動させる音楽はどういうものなのか、全員で追求し続けて欲しいと思う。いずれにしても、非常にホッとしたものを感じる心地よい演奏だった。

さて、1日目の大会から都大会に駒を進めたのは以下の学校。

東海大付属高輪台高等学校(指揮:畠田貴生)
1/バレエ組曲「ガイーヌ」より(A.ハチャトゥリアン
潤徳女子高等学校(指揮:小林龍樹)
2/交響的断章(V.ネリベル)
創価高等学校(指揮:吉田孝司)
1/「スペイン狂詩曲」より(M.ラヴェル


番外篇
東京都立雪谷高等学校
バンドのセッティングの時は、客席から男性が並び方について細かく注意して、指揮台にいるもうひとりの男性が、その指示に従う感じだったので、トレーナーかOBと指揮者の関係だと思ったのだが、アナウンスと共に、指揮台の男性はハケ、スコアを持った本来の指揮者と思われる人が登場。どこかオロオロしながらお辞儀をして、音楽がスタート。いきなり大振りのパフォーマンスで、唖然としてしまう。しかし、目を閉じると、奏者たちは実に心地よいサウンドで骨組みのしっかりとした音楽を演奏している。一体、このバンドは、普段どのような状態で練習し、この本番をどのような思いで迎えたのだろうかと、いろいろ思いを巡らすが、いまひとつ答えが見つからない。自由曲のコンサートバンドとジャズアンサンブルのためのラプソディも、都会の生徒たちらしく、垢抜けた4ビートを演奏しているのだか、その音楽と指揮者がいまひとつ繋がらないのである。演奏だけ取れば、金賞も視野に入るものではあったが、いやはやあの12分間は何だったのか・・・・。もしかして、睡眠不足から来る幻だったのか・・・・。この心のモヤモヤを解決できる方がいたら、是非連絡をお待ちしております。