2007年九州吹奏楽コンクールが終わって・・・・Part2

今年のプログラムは、同じ楽曲の競演も楽しませてもらった。
特に高校の部では、後藤版の「トゥーランドット」とスパークの「宇宙の音楽」、そしてベルリオーズの「幻想交響曲」を複数の団体が演奏を繰り広げた。

最初にトゥーランドットを披露したのは、福岡工大附属城東高校。県大会までは、のびのびとした若々しいサウンドでのプッチーニという印象だったが、九州大会では楽曲へのアプローチをがらりと変えていた。核となるフレーズに大胆にうねりを加えた演奏は、初めて聞いた人は「さすが城東」という感じであったであろうが、ここまでたどりつくには、試行錯誤があったものと思われる。がしかし、そのうねりは、まだまだ肺活量で起こしたもので、腹筋で起こしたそれには程遠いのも事実。このあたりをどう克服して行くかで、全国での賞の色は決まって来るのではないだろうか。それにしても、ソロを担当する個々の楽器の音色の美しさは秀逸である。
そして、この「トゥーランドット」は後半、2団体が演奏することになる。演奏したのは、熊本の玉名女子高と、沖縄の那覇高校。この2団体は対照的だった。エッジを利かせたある意味金属的な玉名と、ソフトなサウンド那覇。その双方を兼ね備えたのが城東、というのは少々乱暴な言い方かもしれないが、それほど、この楽曲を表現しきるには、豊富なサウンドのバリエーションが必要なのである。

次に、「宇宙の音楽」。私がこの曲を聴いたのは、去年の大学の部東京大会だったが、そのときに演奏した創価大学の演奏には鳥肌が立ったのを覚えている。特に江戸川での予選のときの演奏が秀逸だった。
さて、先に登場したのは精華女子高。このバンドはとにかく細かいフレーズやパッセージの再現力が驚異的である。スパークのサディスティックな16分音符を次々に際立たせていくテクニックは、他の追随を許さない。
一方、後半に登場した大牟田高校は、8分音符までの再現度は精度が高いのだが、16分音符になるとフレーズが流れて不明瞭になってしまうのが随所に見られた。やはり高校生ならば、そこまでは精度を高めないと、なかなか次のステージには進めないのである。個々の楽器の音色などは、時折ハッとさせるものを持っていただけに、非常に残念だった。

例えば、液晶の場合画素数が高いほど、その映像は見やすいものとなる。音楽も同じで、やはり細かい動きの精度が高ければ高いほど、音楽を把握しやすくなる。もちろん、音楽として説得力をもたせるには、それだけではダメなのだが、出発点はそこにある。

そういう意味で、身の丈の選曲をするというのも、大切なことである。そのいい例が、鹿児島情報高校。新しい指揮者が赴任したが、生徒の技術はまだまだこれから。そんな時に背伸びをせずに、身の丈の選曲でいかに音楽として聞かせるか・・・・こうしたアプローチの勝利で、激戦の鹿児島県大会を抜けて来た。もちろん一方で背伸びをしてそれを克服して行こうという姿勢もありであって、それは否定しないし、当事者の選択次第である。

というわけで、今年の高校の部を聞いて、わずかではあるが、勢力図に変化が見え初めて来たような印象を受けた。参加した学校の面々は、今何をかんがえ、次に向けて何を始めようとしているのか。
そして、その結果が来年どう集結してくるのか、楽しみにしていたい。