全日本吹奏楽コンクール・中学高校の部

この週末は、東京杉並の普門館全日本吹奏楽コンクールを聞きに行った。
今回は中学の部と高校の部。

まずは中学の部
全国大会には支部大会を経てその代表校が集うのだが、東関東地区代表の3校、厳密に言うと千葉県代表の3校が全て金賞という華々しい成績を残した。
東関東地区の中学校に共通していたのは、その音の粒断ちの良さだろう。
音量が大きいというわけではないが、非常に通るサウンドなのである。ここの楽器もそうだが、合奏になってもその特徴は変わらない。よって、音楽的な表現が非常にし易く、また細かいニュアンスも伝わりやすいのである。
もちろん音楽というのはひとつのあり方に限るわけではないので、いろんなサウンドの形があっていいと思うが、まだ発育途上の中学生にあっては、こうした粒断ちのいい音を出す訓練か徹底されているというのは、楽器毎の力のバラツキを抑えるという意味でも、いみのあることだと思う。

今回の結果は、このサウンドの粒立ちの良さがひとつの分かれ目となっただろうと思われた。
サウンドにややクリアさが欠けるなと思った団体はほとんどが銀賞に、そして通る音ではなく、が鳴る音を奏でた学校は、銅賞に。
まあ、この辺りの基準はそんなに毎年変わらないと思うのだが、やはり本番が近づくと悪魔の囁きが指導者に起こるのだろう。
しかし、それでも我慢して我慢して、楽器本来のサウンドを追求し、クリアな音楽を作り上げたところだけが、頂点を極められるのである。中でも、この日最長不倒の長い長い拍手をウケタのが酒井根中学校。超中学生級の自由曲を見事に演奏仕切った奏者たちの感動を、聴衆も一緒に味わい祝福した形となった。

また今年は、山王中出雲一中という古豪の学校が揃って指導者を代え、さらに同じ自由曲で全国大会に臨むというのも話題になった。
結局2団体共に銀賞だったが、新たなサウンドの可能性を感じさせる好演で、聴衆の拍手喝采を浴びていたのは印象的だった。

続いて、高校の部
今年は東関東の御三家や、北海道の王者東海大四、去年の金賞校、春日部共栄、そして九州の新興勢力松陽高校などがお休みということで、話題に欠けるのではと思いきや、非常に素晴らしい名演のオンパレードとなった。

まずは午前中、通称淀工の定番「ダフニスとクロエ」は、お約束通りのタイトな名演で、丸ちゃん人気と共に主に一般客の拍手喝采を浴びた。
そしてスパークの「宇宙の音楽」を全日本コンクールで初演した精華女子の圧倒的なテクにも感服。後半のファンファーレには神々しささえ感じられた。
東京代表の片倉高校は、文句無しの名演で金賞を受賞し、埼玉の伊奈学園も、限りなく流麗なサウンドと音楽で、特に審査員を魅了したのではないだろうか。
個人的に昔からファンだった旭川商業の復活は嬉しかったが、サウンドが硬質で流氷のようだったのが残念。テクは抜群なので、またサウンドに磨きをかけて登場してもらいたい。
今年は古豪の復活も目立ち、三重県白子高校穂高は、伝統さながらの安定感のあるサウンドで美しい音楽を奏でてくれた。

さて、後半の部。
ぶっちぎりの名演が誕生する。それは埼玉栄高校。課題曲での、ベースラインさえオブリガードのひとつに聞こえて来るような心憎いアナリーゼはもう脱帽。圧巻は自由曲で、トランペットの流麗で優雅なサウンドと芯の通った旋律の再現力は圧巻。CDなどではなく、生の演奏で今日のメンバーで、何度も何度も繰り返して聞いてみたくなる、そんな音楽だった。
そして光が丘明浄といった女子校が初の金賞を受賞。丁寧な音楽作りが好印象だった。
また、指揮者が交代した常連校の福工大城東高校は、声楽出身の先生らしく、重厚なサウンドながら、これでもかと歌いあげる演出で、終演後は聴衆のどよめきとざわめきが続いた。
また昨年まさかの県落ちから超速復活の与野高校は、細かいフレーズの全てを再現する緻密な演奏で金賞を受賞。ここの指揮者、坂田先生が作るサウンドと音楽も個人的に好きである。これで埼玉県代表は全て金賞を受賞。ローマの祭りでの連続金賞記録も26年に伸ばした。
また、東京代表の東海大高輪台高校も、全く危なげない快演で3年連続金賞を受賞。
特に後半は目の覚めるような名演ラッシュとなったからか、なんと金賞6団体という大判振る舞いだった。

高校の部で金賞を受賞した団体は、まずサウンドに艶があること。楽器本来のサウンドと響きを重視した音作りをしていること。音楽を音楽として理解し、ストーリーを聴衆に伝えようという演奏をしていること。個々の奏者の技術の確かさ。これらの要素を満たしている団体はおしなべて金賞を受賞している。

これらの要素の中で、サウンドに艶がない団体は、大体銀賞に。そして楽器本来のサウンドに達していないと思われる団体は銅賞に・・・・まあ単術にこればかりではないのだが、大別すると、こういう形に見えて来たのである。
また、音楽を音楽として理解する部分は、指揮者がそのレベルに達していれば、普通の金賞。奏者もしっかりとそれを理恵胃していれば、ブラボーな金賞。そして奏者がそれを理解した上で更に、音楽を通じて訴えかけようとした団体は、歴史に残る名演と言われる音楽を残すことになったのではていだろうか。

もちろんこうして言葉で言うというのはいかにも無責任で簡単なことかも知れない。でも、少しでも多くのバンドがそういう極みに達する感動を味わって欲しい、そしてそれをコンクールという場所で一緒に味わいたい、私はそう思うのである。

最後に苦言をひとつ。秒刻みのコンクール運営は非常に大変な仕事である。今回特に初出場の中学校のほとんどか、終演後の打楽器の片づけにモタモタしていて、運営係が入りの準備をしながら、出のケアもしなければならないという状況か多々見られた。この点、常連校や古豪と言われる学校は、生徒や先生、そして保護者などかテキパキと片づけをしていて、こういう所に初出場校との差を感じたのである。
特に、経験の浅い学校は、指揮の先生が終演後に握手をしたり、関係者と話をしていて、後片付けを無視しているケースが多かった。是非、先生自ら、大会運営に協力できるよう、心の余裕を持ってもらいたいのである。