全日本吹奏楽コンクール大学・職場・一般の部

さてさて、今年の吹奏楽コンクールもこの週末で終了となった。
最後を飾ったのは、いわゆる成人の方々が参加する部門(一部そうでない場合もあるが)。

まずは土曜日に行われた大学の部。
今年は駒澤大学文教大学という金賞常連校がお休みの大会となったが、その分どんなバンドが登場して来て、どんな演奏を繰り広げるのか、楽しみなコンクールとなった。

前半は、龍谷大学近畿大学の関西勢が注目を集めた。
龍谷大学はここ最近の金賞常連校だが、さすがに課題曲がスタートすると、そのサウンドはそれまでの大学と一線を画すものを感じさせた。が、自由曲では、曲そのものに魅力が欠けているせいか、音楽を通じて訴えかけるモノが感じられなかったのが残念。
一方の近畿大学は、かつての金賞常連で、ここ最近は低迷していたが、課題曲自由曲を通じて、楽曲が持っている世界観を見事に再現して、久々の金賞を受賞した。成績発表の時の喜びようは、これまでの彼らの苦労を物語っていたのだろう。
さて、後半のトップは、常勝神奈川大学
課題曲の冒頭から、全く他を寄せつけない空間を作り出していたのはさすが。ひとつひとつの音楽を構成する要素の音像がクリアで、この日、音楽的に最も聴衆を引きつけた演奏だったと言っていいだろう。
そして、激戦地区東京代表の創価大学は、個人的には都大会の方が好きな演奏ではあったが、揺るぎない技術力と集中力で、金賞を受賞。指揮者の磯貝氏の丁寧な指揮ぶりとステージマナーの良さも印象的だった。

その他、〜華麗なる舞曲〜を熱演した静岡大学が聴衆の最大の興奮と喝采を浴びていたが、音楽的にはややサウンドが拡がりすぎるきらいがあり、サウンドに締まりがあれば、非常に面白い存在になっていただろう。

さ、明けて日曜日。
まずは職場の部からスタート。
NTT東京の3出休みを受けて東京から初出場して来たのは、東芝府中
東芝府中と言えば、ラグビーという印象があるが、実はこのバンド、全日本には初出場ながら、これまでず〜っと東京大会で2〜3番目あたりをキープし続けてきたバンドなのである。
課題曲自由曲を通じて、レンジの広い豊かなサウンドと確実な技術力を見せてくれたが、あと一歩、曲のアナライズやアンサンブルの正確さが及ばなかった印象だった。
そしてリベンジとなったのがヤマハ浜松阪急百貨店
共に、往年のサウンドと音楽の完成度にはまだ遠い印象を受けたが、職場の部のなかにあってはやはり一歩抜きんでいたのは確かである。ただ、阪急がお得意のマーチでコケていたのは意外だったが・・・・。
またお休みのブリジストンに代わって登場して来た新日鉄大分も、豊かなサウンドを聞かせてくれたが、自由曲の選択にやや無理があったかも知れない。

さ、職場の部の発表の後、一般の部がスタート。
途端に音圧がぐぐ〜っとあがって、やや窒息状態になるが、やはり今年も素晴らしい音楽のオンパレードとなった。
まず、アンサンブルリベルテ
課題曲の冒頭のサウンドから、聴衆を圧倒。自由曲も、緻密にアナライズされ、よく考え、よく練られ、よく噛み締められた解釈と緻密な技術力はさすがである。そして、指揮者の福本氏の情熱的な演出とそれにしっかりと付いて来る音楽が、より感銘度をアップさせていた。ただ、完成度は西関東の時の方が上だったような気がする。
続いて、去年は東北で苦杯をなめた秋田吹奏楽。2年ぶりに聞いても、そのゆるぎない演奏力と締まりのあるサウンドは心地よい。非常に音像のクリアな音楽で久々となる金賞をものにした。
そして3年連続出場となった、川越奏和。こちらもリベルテと同様、西関東でも聞かせて頂いたが、課題曲自由曲共に、いまの一般の部の中では完璧に近い演奏のひとつ。自由曲はピアノコンチェルトを絶妙なアレンジと技術力の高い演奏で聞かせてくれた。こちらもリベルテ同様鉄壁の演奏で金賞を受賞。西関東代表は高校の部に続いてアベック受賞(高校の部はアベックではなく3団体受賞ではあるが)となった。
さ、一般の部大詰めになって、オーディエンスの興奮はクライマックスに達する。
まずは、関西の雄、大津シンフォニックバンド
課題曲自由曲一貫して締まりのあるサウンドと緻密すぎるほどに緻密なアンサンブルは揺るぎないものを持っていた。自由曲は楽曲も展開の面白い曲で、音楽的にも非常にレベルの高いものを感じさせた。
そして今年のコンクールの大トリとなったのは、東関東から6年ぶりの出場となった、グラールウィンドオーケストラ。しかし、課題曲の冒頭から、久しぶりの登場ということなど感じさせない自信に満ちたサウンドと音楽が最後まで持続した。天野正道氏の作曲による自由曲も非常に音楽的な魅力を持った作品で、やはりここまで高いレベルのコンクールになると、選曲も非常に大きく影響して来るが、演奏も選曲も合致した、大トリに相応しい音楽だった。

また惜しいなと思われたのは大曲吹奏楽。緻密なアンサンブルと音楽を映像的に再現するのに定評のあるバンドで、自由曲の特に後半はまさにその真骨頂を見せつけられる演奏だったと思う。が、特に課題曲前半部分での破綻が悔やまれる。銀賞の中でも非常に密度の濃い音楽だったと思う。

その他、初の金賞が期待された九州勢は、豊かなサウンドと演奏の安定感を見せつけた佐賀市吹奏楽、大音量ではないものの、しなやかで美しい木管を中心としたサウンドを披露した「緑」と、それぞれに我が道を行く的な存在感は、これはこれでそれぞれの個性として大事にして欲しいと思う。都会型のバンドを追随する必要は、個人的にはないと思うのである。
北海道代表のドゥノールは、近年よい成績を維持して来たが、奏者が演奏を始める準備がしっかり出来ていたのかどうか、ちょっと可哀相な気もした。或いはいつもああいう感じなのかな?
17年ぶりの登場となった出雲市吹奏楽も、我が道を行く的な存在で、都会型のバンドを追随せずに、等身大の音楽を愛し続ける姿は立派なものだと思う。

さ、これで今年の吹奏楽コンクールは総て終了。参加した皆さん、サポートした皆さん、本当にお疲れさまでした。
来年の大学・職場・一般の部は、大阪国際会議場で行われるそうです。