鹿児島県吹奏楽コンクール高校の部二日目

blueoceans122008-07-26

今日も猛暑の鹿児島、立っているだけで汗が出てくる中、県大会二日目に足を運びました。
金賞団体の中から、印象に残った演奏を。

まずは、トップバッター、鹿児島情報高校
昨年初代表になった学校。あれから一年、どう進化したのか聞くのが楽しみだった。課題曲は指揮者お得意のマーチ。イントロからきらびやかなサウンドが非常に心地よい。が、指揮と奏者、また、管楽器と打楽器奏者に一瞬の乱れが見える。が、すぐに立ち直り、トリオは音量をぎりぎりまで抑えた美しい演出、そして後半のクライマックスは圧倒的な推進力で終結した。スネアは、去年の奏者と同じと思われるが、ややマーチが苦手のようだが、九州大会までには、マーチを引っ張る存在になって欲しいものである。自由曲は、さすがのヤビクワールド。特にピアニッシモロングトーンによるハーモニーのブレの無さは他の追随を許さない。徹底的に基礎練習を行っている証拠なのだろう。コンクール向きではない構成をものともせず、吹奏力でオーディエンスを巻き込む・・・・そんな快演だった。

続いて、鹿屋中央高校
ダイナミックレンジの広い重量感のあるサウンドは健在だが、やや音が開き気味なのが気になった。そのため音楽が緩慢に聞こえてしまったのが残念。自由曲のトーッカータとフーガは、トッカータの部分は、持ち前のサウンドを生かしていたが、フーガになると、アナリーゼ不足なのか、フーガの妙を表現出来ていなかったのが残念だった。もちろんトップクラスの名演だったが、バンドの方向性に迷いが見られたのも事実である。

続いて午後の部、県立鶴丸高校
課題曲はやや難解な世界観を、的確に再現していたが、常に音色が同じで、こうした無機質な楽曲に欠かせない音色の色彩感に欠けていたのが残念だった。自由曲は、去年に続いてセレクションものを選んでいたが、このバンドにはもっと演奏効果の高い楽曲があるのではないかと思われる。しっかりと演奏しているのだが、課題曲と自由曲のあまりの世界観の違いに、やや拍子抜けさせられたのも事実。力のあるバンドだけに勿体無い。

続いて、県立加治木高校
課題曲の冒頭は、ピンポイントに定まらなかったが、全体を通して、主旋律に芯が通っていて、音楽の基本に忠実に取り組んでいるのがわかる演奏だった。突出して技術力が高いわけではないが、鳴らす事ではなく、音楽を奏でることを第一義にしている姿勢は素晴らしい。願わくば、ホールいっぱいに響きわたるffが欲しいところだが、単に音量を上げるというのではなく、管楽器でのブレンドの妙によるレンジの広いサウンド作りに挑戦して欲しいと思う。

続いて、3出休み明けの、県立松陽高校
指揮者が交代して初めての県大会となる。課題曲の冒頭は、二日間を通して、唯一ピンポイントで発音していたのはさすがである。サウンドもこれまでの松陽サウンドそのままに、より重量感が加わったような気がする。充分な音量ながら、決して鋭角的なサウンドにならずに、明瞭なアウトラインを描クコとに成功していた唯一のバンドである。自由曲の前半は、高校の部を通じて、唯一「映像の見える」音楽を奏でるのに成功していた。やや、後半部分で輪郭が不鮮明になる部分もあったが、九州大会に向けて、精度をアップさせて行くのだろう。これで松陽高校は、初出場初代表以来、24回連続24回目の県代表をゲットした。

続いて、去年初代表となった、出水中央高校
課題曲の冒頭はややポイントをはずしたが、輪郭のはっきりとした鋭角的なサウンドは健在だった。全体的にややまったりとした部分も見られたが、安全運転に徹したのだろうか。自由曲ではがらりと世界観が変わり、こちらの方に多くの時間を費やしたのではないかと思えるぐらいだった。やや許容を超えるサウンドも見られたが、ホールの特性もあるのかもしれない。九州大会に向けては、課題曲のクォリティアップが望まれるだろう。しかし、オーディエンスへのアピール度は、今日の最長不倒だったようだ。

最後は、神村学園高等部
課題曲自由曲を通じて思ったのは、ややサウンドに絞まりが無いという点。それぞれの強弱記号の中で、すべての楽器が一緒に音量を変えていくので、音楽に立体感が出て来ないのである。また、自由曲後半の全楽器による許容範囲を超えた強奏の連続も、少々ハテナ印を感じさせられた。やや、向かう方向を見誤っているのではないだろうか。奏者個々の技術は非常に高いので、色彩感のある音楽、立体感のあるサウンド、こうしたものを追求して欲しいと、個人的に思うのである。

というわけで、年々激戦となっている鹿児島県大会を堪能させていただきました。
昨日もブログに書いたように、高度な技術を前提に、音楽と音色の質の高い団体が、鹿児島県代表をゲットしていました。音楽や音色の質というのは、年々変化向上しています。それに付いて来れていないバンドもあれば、リードしようとしているバンドがあるもの事実。でもそうしたアプローチの域まで達しなければ、3枠という代表権を獲得するのは難しいというレベルにまで来たのは、聞く側にとっては頼もしいことですが、取り組む側は大変な作業の連続でしょう。
常に、いろんな音楽に興味を持ち、いいものに数多く接する姿勢も必要になってくるのかもしれません。
また、技術力よりも音楽力を重視した今年の審査基準も、良かったと思います。つまり、高い技術で演奏しているものの音楽的な整理がついていないバンドより、少々技術は劣っても、音楽的に整理をつけていたバンドの方が高評価だったという事ですね。

ここ最近の九州大会は、福岡勢と鹿児島勢の高いレベルの音楽が凌ぎを削っています。鹿児島県代表の九州大会での健闘を祈りましょう。それでは今日の金賞受賞団体です。
原田学園鹿児島情報高校
鹿児島県立伊集院高校
前田学園鹿屋中央高校
鹿児島県立国分高校
鹿児島県立鶴丸高校
鹿児島県立加治木高校
鹿児島県立松陽高校
出水中央高校
神村学園高等部

そして、鹿児島県代表は以下の3団体です。(出演順に)

原田学園鹿児島情報高等学校吹奏楽部 (指揮 : 屋比久勲) 2年連続2回目
課題曲1 : ブライアンの休日(内藤淳一)
自由曲:交響曲第2番「オデッセイ」より(R.W.スミス)

鹿児島県立松陽高等学校吹奏楽部 (指揮 : 美座賢治) 24回連続24回目
課題曲4 : 天馬の道〜吹奏楽のために(片岡寛晶)
自由曲 : 四つの交響的印象「教会のステンドグラス」より、エジプトへの逃避、大天使ミカエル(O.レスピーギ/中村俊哉)

出水中央高等学校吹奏楽部 (指揮 : 福島玲士) 2年連続2回目
課題曲4 : 天馬の道〜吹奏楽のために(片岡寛晶)
自由曲:瑜伽行中観-吾妻鏡異聞- (天野 正道)

というわけで、高校生の皆さん、関係者の皆さん、2日間お疲れ様でした。また来年も素晴らしい音楽を期待したいと思います。