九州吹奏楽コンクール・中学校の部

東京から小倉への移動は、はじめてスターフライヤーズを使ってみました。
聞いていた通りの革のシートで、サービスを全て排除したスカイマークとは反対に、しっかりした機内サービスも話題のスターフライヤーズ。
やや、その自慢の革シートが中途半端だからなのか、いまひとつ安定感に欠けていましたが、まあ及第点という感じでしょうか。
それにしても、福岡の空港があれだけ近いのに、北九州空港は本当に必要なのか・・・・と改めて考えさせられました。

さて、福岡県大会で鬼門鬼門と言われた北九州厚生年金会館ですが、聞いた限りでは、そんなに特殊なホールという感じはしませんでした。が、選曲において全体の総合的な合奏力で音楽を丁寧に積み重ねていく演奏よりは、エッジと輪郭のはっきりした楽曲を個人技でクリアに聞かせる演奏なり選曲の方がやや有利なのかな、という印象はありました。
それから、午前の部の後半がスタートした頃から、会場の温度があがり、音がガンガン飛んで来る感じに急激に変化したのも、面白い特徴だなという感じでした。

中学校の部で代表権を獲得したのは、

佐賀県代表 成章中学校
福岡県代表 中間東中学校
福岡県代表 宇美東中学校

という去年とは全取っ替えの顔ぶれ。

佐賀の成章中学校は、去年の偏ったサウンドから一気に安定感を持ったバランスのいいものに変化を遂げていました。やや課題曲においてハーモニーが崩れたり、細かいアンサンブルの乱れがあったのが残念でした。自由曲は、この会場の響きをもっとも味方にした選曲と演奏。時折精華女子校サウンドを思わせる音の組み立て方が、非常に効果的で、強奏においてもサウンドの崩れが見られなかったのが良かったと思います。ただ、「ここまで頑張りました」的な感じに聞こえてしまったのも事実で、もう少し音楽に余裕が出てくると、更にスケールアップできるのではという印象を持ちました。もちろん個々人の技術力の高さは素晴らしい学校のひとつです。

福岡県代表の中間東中学校は、バンドの総合力をもって会場全体を音楽で包み込むという印象のバンド。マイルドながらもクリアなサウンドが印象的でした。ただ、まだまだ課題曲のツメの甘さや、自由曲における細かい抑揚、ニュアンスの演出に改善の余地があるのも事実。しかし、ここ数年注目していたバンドだけに、今回の演奏は個人的にも嬉しい成長ぶりでした。また会場のヒートアップに合わせて、サウンドが面白いように空気の流れに乗っているのが、肉眼で見えているかのようなサウンドにも、頼もしいものを感じました。しかし、全国大会に向けては、課題曲自由曲共に、アンサンブルの精度を高める必要がありそうです。

そしてもうひとつの代表校、宇美東中学校。ここの先生は、以前に須恵中学校を3年連続全国大会に導いた経験を持つ実力者です。言ってみれば、コンクールをよく知っている指導者と言っていいでしょう。やや人数は少なめでしたが、配置的に真ん中に寄せ気味で、楽器のブレンド感により不足しがちな音量を全体の響きで補っていたのが印象的でした。特に自由曲における集中力は見事で、管楽器でしっかりと音楽表現を組み立て、そこに打楽器を添えるという、非情に理想的な音楽作りが良かったと思います。課題曲においてはまだまだ詰める所が多く見られましたが、プログラム最後を精度の高い好演で締めくくりました。自由曲では、随所で音の発音がバラバラになってしまう部分の精度を、更にあげて欲しいかな、と思いました。

もうひとつの金賞校は、宮崎県代表の生目中学校。課題曲は自由曲を通じてこのバンドは木管の美しい響きで音楽全体を包み込んでいたのが好感が持てました。特に、今や聞き飽きた感のあるメリーウィドウセレクションですが、これまでに聞いてきた様々な演奏の中でも中々前に出てこなかった隠れてフレーズを随所で際立たせていたアナリーゼ力はお見事。更に金管楽器サウンドの充実が加われば、流麗ながらもスケールが大きい理想的な音楽を構築できていたことでしょう。あと、音の発音にやや指揮者の癖がそのまま乗り移っていたのが気になりましたが、この癖が個性に聞こえるようになれば、それはそれでいいのかも知れません。

さて、地元出身ということで期待していた鹿児島県代表の中学校の面々。
まずは2年連続出場となった、伊敷台中学校。現顧問の先生赴任後急激に伸びてきた学校のひとつ。この学校は全体の合奏力総合力で聞かせるバンドであるためか、出演順も手伝って、やや音楽のダイナミックレンジの幅が狭くなってしまっていたのが非常に残念でした。個々人の技術力も高く、サウンドの質も高いレベルにあるのですが、全体を通して音楽にクリアさが欠けていたのが、アピール度を低くしてしまったのかも知れません。が、自由曲のトランペットのソロなど、演奏力も音楽力もあるバンドなので、更にスキルアップして、より美しい音楽を追求して欲しいですね。

続いて初出場となった桜丘中学校。学校自体は初出場ですが、顧問の先生は九州大会を何度も経験している方。県大会では打楽器のオーバーフローが音楽の流れを殺してしまう場面が見られていましたが、この日の演奏はこれまでになく美しい音楽の世界を演出するのに成功していました。ただ、これまでダイナミズムの演出を打楽器に頼っていたためか、管楽器の響きがやや力不足で、その辺りが今後の課題になるのではないかと思われます。また自由曲後半も、歌いすぎに注意して、あっさりしていながら簡明度の高い演出を心がけてみてはどうでしょう。個々人の技術力は高いので、腹筋を使った深みのある管楽器サウンドの構築を目指してもらいたいものです。

そしてこちらは、伊敷台中学校の現顧問がかつて全国大会に導いてこともある、重富中学校。現顧問になって3度目の出場で、初の九州大会出場となりました。全体を通して、よく鍛えられた、骨格のしっかりした演奏という印象でしたが、まだサウンドが完成型に達していないからか、音楽全体の輪郭がボヤけていたのが残念でした。また、それぞれの楽器のサウンドの種類を更に増やして行くことで、音楽は更に立体的になるわけで、更なる音力のアップを期待したいところ。しかし、県大会からの成長ぶりは、非常に頼もしいものがありました。

さて、去年は2校共に全国大会に出場した沖縄県勢。
山内中学校は、高校の部のところでもちょっと書きましたが、課題曲4番におけるハーモニーが安定せずに、残念な結果となりました。また自由曲もお得意のセレクションものでしたが、いま一つその世界観が演出できていなかったのが残念。やはり、午前の部の前半は中月生の体力にはキツいものがあるのかもしれないですね。
美里中学校は、顧問が変わって、サウンドの過渡期にあるものと思われました。また個々人の技術力も去年の方が圧倒的にあったような印象を受けました。新しい顧問の元、それぞれの楽器の演奏力のアップそして、全体の合奏力の向上を期待したいところです。

その他、全体的に抑揚不足な演奏、限度を超えた爆音による演奏をしてしまった学校は、今回は手厳しい評価を受けてしまったようですね。やはり、音楽を音楽として徴収に聞かせるために、どういうものを目標にすればいいのか・・・・まずはそういう話し合いから、それぞれにやらなければならない事、経験しなければならない事が見えてきて、そのための努力をする・・・・そんな原点をもう一度見直して、次なる練習へと取り組んでもらいたいと感じた中学校の部でした。