九州吹奏楽コンクール・高等学校の部・その①

先週の土曜日の東京都吹奏楽コンクール大学の部予選終了後、小倉に移動して、九州大会中学校の部と高校の部を聞いてきました。
現在多忙のため、取り急ぎ高校の部の感想を簡単に。
前日の中学校の部と同様、非常に厳しい点数が出る中、金賞を受賞したのは4団体。
しかし、通して聞いた感じで、この金賞4校が突出したサウンドと音楽を持っていたのも事実です。

今年の課題曲は、非常にバンドの実力を評価しやすい楽曲が揃っています。
1番のブライアンはオープニングのファンファーレの精度とその音色が全てを決めたと言ってもいいでしょう。わずかでもズレが生じていたり、音色に艶がなく棒吹きになっている団体は軒並み銀賞か銅賞の成績でした。
2番のマーチも、同じくイントロの精度。16部音符を乱れなくクリアに明るいサウンドで演出できるかどうかがカギでしたね。
3番は、イントロのフレーズをズレを生じさせることなく、また2つの楽器の音としてでなく、ひとつの楽器のサウンドであるかのようにブレンドさせることが出来たかどうか。
そして4番はイントロの動きの精度とピッチ、また中盤後のフルートソロの伴奏を努める金管楽器のハーモニーるにおけるピッチの安定度。
今回、これらの点だけで、自分なりに聴きながら賞を区分けして行きましたが、見事に的中しました。それほど今年の課題曲はそのバンドの潜在能力を全て浮き上がらせる効果的な楽曲が集まっていたと言っていいでしょう。
もちろん、これは九州大会に限った事でなく、各地で聞いても、同じ結果が出ています。

課題曲1番のファンファーレは、精華と情報の2校だけが、この条件をクリア。中でも精華女子校は、他の学校が出せなかった、隠れたフレーズを聞かせることに成功していましたね。非常に細かいアナリーゼ力です。そして何よりも独自の解釈をしながら、オーソドックスなマーチに聞かせるという手腕は九州随一のものです。

一方の鹿児島情報高校は、イントロのファンファーレの精度が大会随一のものでした。そしてマーチの王道をこれでもかと展開します。イントロの抑揚の独特な付け方も屋比久先生ならではの演出。特にトリオ部分のppで、全く音楽が停滞しない持続力はさすがです。

また、課題曲2番を取り上げた穂高のイントロのサウンドは超クリアでしたね。音色も非常に明るく、トリオ部分旋律も、ともすればそのまま吹くと味気ないものになっているスコアに息を吹き込むのに成功していた唯一のバンドでした。

課題曲4番を取り上げた松陽高校は、イントロの精度やハーモニーの安定度は抜群です。特にフルートソロ部分を支える伴奏系のハーモニーは全くブレる事なく、このバンドの底力を見せつけてくれました。4番を取り上げたバンドの中で、このハーモニーの精度を完璧にこなしていたのは、この学校だけでした。今回は課題曲自由曲を通して、ややサウンドに曇りが見えましたが、1年間コンクールを休んだ不安などがあったのでしょうか。しかし、今年は鹿児島県大会も聞きましたが、あの時の演奏は全くの別バンドという印象。あの潜在能力を持ってすれば、先行きに不安は全く感じられません。

というわけで、簡単に全体の印象を書きましたが、会場のキャパシティを上回る爆音を出してしまったバンドは軒並み減点されていたようですし、そうしたバンドは迫力的な観客の印象度は高くても、細かいハーモニーの精度などには手が回らず、また、回っていたとしても爆音のためにそのハーモニー美しさを演出するに至っていませんでした。
また、譜面上鋭角的な動きの音を、いかに耳当たり良く聞かせるか・・・そういう努力も高校生レベルになれば必要になるでしょう。
観客をビックリさせるのではなく、音楽でうっとりさせる・・・・そんな音楽的な方向性をみんなで再確認する事が大切なのではないか・・・・そんな事を考えさせられた2日間でした。

印象に残った団体の細かな感想はまた後日アップしたいと思います。
それにしても、去年の鹿児島大会は屋内に並んだまだ良かったのですが、今回の厚生年金会館は会場待ちが外だったので、お客さんも大変でしたね。
ま、そんな中で金賞4つという非常に厳しい結果で、クールダウンに時間がかかったかも知れませんが、みなさん高い技術力を持っているのですから、もう一度「音楽」という原点に立って、日々の活動に励んで頂きたいと思ったのでした。

大学の東京大会予選と、九州大会中学校の部についても、後日アップする予定です。