九州吹奏楽コンクール・高等学校の部・その②

それでは、先日行われた高校の部の感想をやや詳しく。まずは金賞受賞校から。

トップバッターの精華女子高校
福岡の地区予選でも感じたのだが、イントロの装飾音を最も効果的に再現していたのがこの学校。朝一番とは思えないほど歯切れのいいファンファーレはお見事。トリオ前のトロンボーンによるオブリガートがややバランス的に強すぎるかなと感じたぐらいで、ほぼ完璧なマーチを披露していた。
自由曲はアグレッシブな精華女子校ならではの選曲だが、ピンポイントにきっちり入ってくる冒頭のホルンから伴奏系のハーモニーまで、隅々まで行き届いた演出力に圧倒された。課題曲自由曲共に、ともすれば平面的になってしまいそうな譜面(ふづら)を、立体的に構築して来た手腕で、トップ通過をものにした・・・・そんな感じの12分間だった。あとは、精度を更に高めていけば、次の段階でもいい結果が得られるのではないだろうか。

続いて、九州大会に去年初登場して来た、鹿児島情報高校
指揮者は、言わずと知れた沖縄出身、城東高校経由の屋比久勲氏。
赴任一年目で九州大会に登場して、二年目にして九州初代表となった。今回の九州大会での演奏は、鹿児島県大会の時と、さほど変わりはない演奏だったが、ほぼ同じ演奏をさせてしまうところが、実は、屋比久氏の凄技なのではないかと思う。課題曲のブライアンは、ほぼ完璧なバランスによるファンファーレからスタート。県大会では少々コケ気味だったスネア君も、この日はグー!。去年のリベンジを果たした感じだ。そしてトリオの部分の美しさも群を抜いていた。後半も非常にクリアな音楽作りは他を圧倒していた。
自由曲は、曲の面白さを伝えるというものではなく、生徒たちの習熟度をこれでもかと提示する選曲。この辺も氏の凄技のひとつなのだろう。前半部分のppにおけるロングトーンの正確さと、更に音を離す時の丁寧さは、大会髄一のものだった。また打楽器と管楽器のバランスの良さはお手本にしたい。

続いて、去年久々に全国大会に復帰した、福岡県立嘉穂高
課題曲のイントロは非常にクリアで、自信を持って演奏に入っているのが手にとるようにわかった。トリオのバッキングも非常に流麗で、最後まで、クリアさを維持しながら、終了。この課題曲がこんなにも突き抜けた音符を持っていたのかと再認識させられる演奏だった。
自由曲になっても、サウンドのクリアさは失う事なく、ダイナックレンジの広い音楽を展開し続けていく。欲を言えば、部分的に音楽のうねりが加われば、更に立体的で映像感のある音楽になるのではないかと思われた。それにしても、久々の全国大会出場がここまで音楽に自信を持たせるとは・・・・素晴らしい。

続いて、3年連続出場休みから復帰した、鹿児島県立松陽高校
顧問が交代して、初めての九州大会となる。
課題曲冒頭は、ピンポイントで正確なハーモニーの導入部を見せるが、ややアクシデントが起こると、その辺りからやや音楽的に縮こまってしまったように見られたのは残念だった。がしかし、中盤の伴奏系のハーモニーの美しさやピッチの安定度は抜群で、このバンドの潜在能力の高さを見せていた。
自由曲も、冒頭から、非常に美しいこのバンドならではの世界観を披露していたが、鹿児島県大会の時に比べると、やや音楽的に守りに入ってしまったかのような印象を受けた。あの時のようなうねりまくる音楽のほとばしりを今回は感じられなかったのが残念。おそらく、九州代表校との差は、失敗をおそれず自信を持って自分たちの音楽を展開できたかどうか・・・・ではなかっただろうか。本番直前のアクシデントは可哀相だったが、でも、それを含めての一発勝負のコンクール。しかし、2人の審査員から満点を引き出したのを見ても、潜在能力は高いバンドなので、自ずと進む方向は見えて来る事だろう。今年のあなた方の県大会の音源を、私は宝物にさせて頂きます!

さて、引き続いて、銀賞バンドの中から、いくつか印象に残った団体を。
まずは、福岡県立修猷館高校
かつて、城南高校を全国大会に導いた先生が指揮するバンドである。
福岡地区予選の時は、打楽器がバランスを崩した課題曲にびっくりしたものだが、九州大会ではしっかりと修正してきていた部分もあり、まだ修正可能な部分もあり・・・という感じか。また、全体を通して、音楽がやや平面的になっていたのが残念。また自由曲は無機質な部分が多い楽曲なだけに、サウンドに艶が欲しい場面が多々見られた。そうしたサウンドと音楽のバランスみたいなものを考える事も、昨今の九州大会のレベルでは必要になってくるだろう。

続いて、福岡県代表常連の、福岡県立城南高校、福岡県立小倉高校
両校共に共通して言えるのは、サウンドや音楽の抑揚が、いつもバンド一斉に・・・・となっている点で、音楽を立体的に聞かせるためには、もっときめ細やかな、抑揚付けを辛抱強く実践しなければならないのではないかと思われた。特に課題曲の特に導入部分において、両校共に精彩を欠いていたのは残念。

同じく福岡県代表、福岡第一高校
課題曲の冒頭から、ややハーモニーが不安定で、中盤のフルートソロ部分も、伴奏系のハーモニーのピッチが不安定だったのは残念だった。自由曲でも、金管楽器がことごとくピンポイントをはずしてしまっていたが、この日に限った事だったのだろうか・・・・。

鹿児島県代表、出水中央高校
きっちりと縦の線を揃えたアンサンブル力は見事だが、まだバンドサウンドの音色のバリエーションが乏しいという印象を受けた。自由曲は天野氏のオーケストレーションも手伝って、さまざまな場面を想起させてくれる音楽を作っていたが、課題曲が平凡なものに終わってしまったのが残念。高校生ならではの豊富な音色の更なる追求を期待したい。

沖縄県代表の沖縄県那覇高校沖縄県立コザ高校
去年のような、緊張感を持ったサウンドや音楽を今年も期待していたのだが、課題曲自由曲共に、やや冗漫なものになっていたのは残念だった。サウンド那覇、技術力のコザというイメージがあったが、両校共にサウンドの作り上げ方にやや失敗したのかも知れない。もう一度原点に戻って、思いを表現するための手段としてのサウンド作りの方向性を練り直してもらいたい。特にトゥーランドットは打楽器の強打が音楽の流れを遮ってしまっていた。

続いて、福岡県の常連校、大牟田高校
県大会では美しいサウンドに変身していたというので期待していたが、課題曲の冒頭の棒吹きは直っておらず、また自由曲も突き刺さるようなサウンドの嵐が、少々耳に痛かった。いつも言っているのだが、持っている技術の矛先をしっかりと見据えるべきではないだろうか。

大分県からは、大分中学校高等学校
おっと、珍しい配置だという感じがしたか、トランペットなど金管楽器がやや弱いのだろうか。全面に据えての演奏。しかし、課題曲がスタートするとどうじに、非常に艶のある音色にまたビックリ。楽器によっては技術力にバラツキが見られたか、自由な発想でサウンドをコントロールしているのが、非常に興味深かった。今の艶のあるサウンドに、技術力を追いつかせれば、また一段と輝きを増した音楽を奏でられることだろう。あと、揃えなければならない所は、キッチリ揃えましょう。

というわけで、ザッと思いつくままに印象に残ったバンドについて書いてみたが、また思い返す事があったら、追記するかも・・・・。今日のところはこの辺で。