全日本吹奏楽コンクール・職場一般の部

昨日に引き続いて、全日本吹奏楽コンクール・職場一般の部に足を運びました。
まずは今年が最後の開催となる職場の部。
常連のヤマハ吹奏楽ブリヂストン吹奏楽は、やや雑然とした印象もありましたが、総合力で金賞を受賞。
新興のNTT東京吹奏楽は課題曲自由曲共に、非常に輪郭のハッキリとした音楽という印象で、今年の職場の部の中でのアピール度は最高だったと思います。
そして金賞団体と銀賞団体、さらに銀賞団体と銅賞団体には、大きな開きがあり、職場の部最後の年、残念ながらここ数年の問題点がさらに浮き彫りになったという事を自らが証明していたようでした。
職場の部のファンとしては残念ですが、先を見据えた解消だと言っていいのでしょう。

さて、一般の部。
トップバッターは、名取交響吹奏楽。職場の部のあとだからか、そのサウンドがひとまわりもふたまわりも大きく主張して来ました。しかし、強奏部分でも崩れる事なく響きわたるサウンドは圧巻です。熟練指揮者の棒も的確で、また自由曲も邦人作品が多い中で耳にすると、やはり音楽的に安心するのも事実です。もちろん邦人作品を演奏する事を否定するわけではありませんが、邦人作品、もっともっと頑張って欲しいですね。弱奏部分でやや不安定な部分がみられましたが、その他のプラス要素がそれらを帳消しにしていました。

さ、続いて古豪の尼崎吹奏楽。一般の部で今も引き続き全日本に駒を進め続けているのは、驚きの存在ですね。サウンド的な派手さはないもののいつも個性的で美しい音楽をマイペースに聞かせてくれます。その分ややアピール度に欠けるのも事実ですが。
続くリヴィエール吹奏楽。課題曲1番は、大人の重厚なサウンドには、やや重荷ですね。マーチの推進力が激減してしまいます。自由曲では独特の世界観を作っていましたが、課題曲の不調がやはり残念でした。ゴリ押しだけでは全日本では通用しない事の証明でしょう。
そして、ウィンドアンサンブル ドゥ・ノール。課題曲の響きにやや不自然さを感じましたが、自由曲はおそらく指揮者が自分のバンドにあったアレンジを施したのでしょう。音楽的にはインパクトに欠けていましたが、聞きやすい世界観を作っていました。
午前の最後は、松陽高校OB吹奏楽団「緑」。高校の伝統そのままに高い技術力と流麗なサウンドと音楽が印象的です。ロールシンバルのスネークイン・スネークアウトぶりには脱帽です。ここ数年はややサウンドに曇りがみられましたが、今日は非常にクリアなサウンドと適度な緊張感を持った演奏でした。これでサウンドに重厚さが加われば鬼に金棒となるのでしょう。

さて、昼食を挟んで午後の団体がスタート。まずは、相模原吹奏楽。激戦区の東関東をくぐり抜けての登場。課題曲は緊張感を適度に保った好演で、技術力も高いものを感じさせたが、音楽的にもサウンド的にもややクリアさに欠けるのが、残念だった。自由曲は楽曲もややクリアさに欠けていたためか、主張めいたものが感じられないものになってしまっていた。
続く佐賀吹奏楽。大都市部のバンドに引けをとらないボリューム感を持ったバンドである。が、音の塊を右から左へと移動させるようなコントロール法で、音量をあげることに神経が行き過ぎて、音楽が置き去りにされてしまっているような印象を受けた・・・・というか毎回受けてしまう。まずは音楽ありきではないかな・・・と思うのだが。
続いて鏡野吹奏楽は、きっちりと固まったサウンドが心地よかったが、まだまだ技術的にスキルアップする余地が大いにあるのではないかと思う。
中国代表の倉敷グリーンハーモニーも、この地区からの常連だが、ここ数年はエッジのないサウンドと演奏技術が音楽の流れをせき止めてしまっているようだ。

そして、西関東代表のソールリジェール吹奏楽。課題曲は全体的にやや大味ではあったが丁寧な音楽に好感が持てた。圧巻は自由曲で、編曲者の指揮というのも相まって、非常によく整理された無駄のない音楽作りと、アマチュアならではの「熱さ」みたいなものが伝わってくる好演だった。
北陸のウィンド・アンサンブル・ソレイユは、非常に洗練されたサウンドが印象的だったが、まだまだ音楽的な詰めが、一般の部のレベルでは望まれる。
伊奈学園OB吹奏楽は、サウンドにやや不安定さが感じられたのと、特に自由曲において不自然な解釈が感じられたのが残念。

さ、東関東の雄、土気シビックウインドオーケストラ。課題曲3番が非常にクォリティの高いものとなった。前日の駒澤大学も素晴らしかったが、それを上回ると感じさせるほどのアナリーゼの素晴らしさには脱帽である。自由曲でも、こなれた楽曲を余裕で演奏しているという感じが、頼もしかった。
そして東北の雄、秋田吹奏楽。非常に重厚ながらも、エッジの切れ味鋭いサウンドが心地よいバンドである。課題曲は、やはり一般の部の重厚なサウンドには1番はやや重荷だったのか、全体的に芯のぼやけた演奏になってしまっていたのが残念。自由曲は、このバンドのサウンドを生かした作品ではあったが、楽曲自体が焦点のぼやけたものだったためか、音楽が終始曖昧なまま終わってしまった印象だった。スーパーテクとスーパーサウンドを持ったバンドだけに残念である。
続いて、東海代表の創価中部サウンド吹奏楽。課題曲はやや不安定なマーチになっていたのが残念。自由曲では、打楽器と管楽器のバランスに難が感じられたのが残念だった。サウンドそのものは締まりが適度にある聞きやすいものだったが。

そして今年のコンクールの大トリは、締めくくりにふさわしい、圧倒的な名演だった。そのバンドは大津シンフォニックバンド。課題曲は、それぞれの要素の粒立ちが素晴らしく、音像が非常にクリアなサウンドとしっかりとアナリーゼされた解釈による音楽が他のバンドを圧倒していた。自由曲においても、そのサウンドと音像のクリアさは揺るぎなく、落ち着きはらった指揮者と冷静な奏者が生み出すパッショナブルなサウンドと音楽に、最後は十分に酔わせていただいた。

さ、というわけで、今年のコンクールのスケジュールもすべて終了。
来年は、また音響効果の悪い「名古屋センチュリーホール」なんだそうな。
来年から一般の部の出場団体は職場の部の終了と共に増えるようだが、その時には、一般の部には3出休みの制度はいらないんじゃないかな・・・とも思ってしまったのだが、いかがだろうか。