第25回福岡県吹奏楽コンクール高校の部

鹿児島県大会の後、福岡に戻り、早朝のバスで飯塚に出かけ、福岡県吹奏楽コンクールを聴いてきました。
その中から金賞団体を中心に感想を簡単に。

まずは代表団体をプログラム順に。
北九州市立高等学校
以前は確か戸畑商業高校という名前でしたが、その時代にこの学校のサウンドは好きだった記憶があります。久しぶりに県大会に来てそのサウンドに再び接することが出来ました。課題曲はオーソドックスな解釈で冒頭のファンファーレの伸びやかさが朝早い出番にも関わらず、きらびやかさも加わって好感が持てました。自由曲のローマの祭は、そのエッジのしっかりとした金管サウンドに最適で、ややテンポ設定の速さの為かいくつかのほころびは見えましたが、世界観をしっかりと再現する演奏でした。やや中域と低域のサウンドが薄いのが残念でしたが、その辺が克服されれば更にダイナミックで安定した音楽を演じることが出来る事でしょう。

都築学園福岡第一高等学校
ここ最近はらしからぬ演奏が続いていた感がありましたが(失礼!)今年は支部予選から迷いが吹っ切れた感があって、非常に頼もしさを覚えました。課題曲5番は冒頭から、質の高い木管サウンドが流れてきますが、フレーズの受け渡しが不自然な部分がみられたのが残念。無機質な中にも、場面転換の様が垣間見えると更に音楽に奥行きが増すかも知れません。自由曲は非常にしっかりした発音を持つひとつひとつの楽器が縦横無尽に音を飛び交わす様が非常に心地よく、自信に満ちたサウンドはオーディエンスを魅了するに充分なものがありました。欲を言えば、サウンドに更に温もりが出てくると、音楽にストーリー性が備わってくるのではないかと思います。

福岡工業大学附属城東高等学校
非常に突き抜けた感のあるファンファーレからスタートした課題曲、第一主題は非常に流麗な木管サウンドからスタートしますが、今日はやや固さがみられたのが残念。しかし、ブラスが加わっての艶のあるサウンドはやはり圧巻です。速めのテンポ設定も支部大会ほどは気になりませんでした。マーチとしての推進力が増した証拠なのでしょう。トリオのオブリガードも美しく、シーンが鮮やかに脳裏に再現されるマーチでした。プロムナードがバッチリ決まった展覧会の絵は、やや奏法に停滞感が感じられたのは残念でしたが、課題曲自由曲共に、まだ試行錯誤を重ねている途上なのかも知れません。クライマックスの安定度は今日も圧巻でしたが、やややりすぎ感があったのも否めません。九州大会ではまたどんな解釈で来るのか、楽しみです。

福岡県立修猷館高等学校
自信に満ちたファンファーレからスタートした課題曲ですが、マーチとしてはややせせこましい感じがしたのが残念。これから更に音楽的な整理を施して行くのでしょう。自由曲のマインドスケープは勇壮なイントロから音楽がめまぐるしく展開して行きますが、今日は随所でやや息切れしてしまうところがみられたのが残念でした。中盤から終盤にかけての美しさは秀逸で、これと前後半の対比がクッキリと浮かび上がってくると、音楽のひとつの解釈としてのゴールは近いかも知れません。そういえば、この曲の中間部、何かの和声に似ているなと思っていたのですが、ショスタコの5番でした。

福岡県立小倉高等学校
課題曲5番は、流れるような木管サウンドからスタートしますが、やはりまだフレーズの受け渡しがうまくいっていないようで、未消化のまま終わってしまった感じだったのは残念でした。終盤の打楽器と管楽器のコラボレーションも、更に方向性が明確になると、音楽がクリアになるでしょう。自由曲のサロメオーボエなど、個人力の高さを武器に、かっちりとまとめあげていました。ただ、妖艶さなどを演出すには至らず、まだ発展途上にあるという印象でした。九州大会までにどんなサロメに変身をなし遂げるのか・・・・楽しみです。

精華女子高等学校
午後の部トップが精華という事もあってか、会場は立ち見が出る超満員状態。課題曲冒頭には珍しいミスがあったりしましたが、しっかりと作り上げてきた音楽の前には、そうしたことは全く関係無かったようです。まず最初に驚いたのは、ほとんどのバンドのサウンドは正面から客席に届いてくる中で、たとえば今日の城東高校などは、天井から降ってくるように錯覚するサウンドでしたが、精華女子校の場合は、地の底から這い上がってくるような、中低域の充実ぶりとうねりを兼ね備えた、極上のものでした。これは私が理想とするサウンドのひとつで、非常に幸せな12分間でした。そして、自由曲は非常に難易度の高い楽曲ですが、音楽の輪郭はもちろんのこと、内声部の処理にもしっかりと手が行き届いていて、それがまた新たな音楽のうねりを作り出していたのが感動的でした。ただ一方で、今日の傷やほころびは、九州大会への課題となるのでしょう。

大牟田高等学校
大編成バンドがタイトに演奏するのは非常に難しい課題曲2番ですが、やはり今回もそれを克服するには至っていませんでした。自由曲はこのバンドの技術力の高さサウンドのダイナミックさをうまく組み合わせた演奏でしたが、全体を通してややあっさり系に終始していて、音楽のうねりや風みたいなものを感じられなかったのが残念でした。このバンドの底力をもってすれば、更なる高みに到達できるはずだと思うのですが。

中村学園女子高等学校
課題曲は全体を通して、優等生的な演奏で、主旋律が際立った、クリアな音楽でしたが、そこに高校生なりの解釈を加えるまでには至っていなかったのが残念でした。しかし、重厚感のある木管サウンドは健在で、ややディレイの長いこのホールとの相性が非常に良いサウンドを持ったバンドだなという印象を持ちました。自由曲も、このバンドのサウンドの特徴を生かした選曲でしたが、終始同じ色で塗り込められていた感じで、ややオーケストレーションに頼った感があったのは残念。積極的な場面転換が音楽に加われば、更に立体感が出るのではないかと思いました。

以上が今年の福岡県代表8団体でした。

その他金賞を受賞したのが、
福岡県立嘉穂高等学校
やはり今年の2番を大編成バンドがタイトにクリアに演奏しきるのは、難しいものがあるようで、終始迷いを感じさせる音楽になってしまっていたのが残念でした。例年は木管サウンドの美しさに定評があるバンドでしたが、やや今日のサウンドは音が乾燥した部分がみられたのが残念でした。しかし、それでも高い水準を持ったバンドであるのは間違いありません。自由曲はアレンジのオーケストレーションがこのバンドにいまひとつ合っていないようで、サウンドが終始濁りを持っていたのが残念でした。そういう意味ではもったいない気がしましたが、一方で楽器の発音が全体的に曖昧に感じられたのは、このバンドらしからぬものだったと思います。また来年に期待です。

もうひとつの金賞は、福岡県立北筑高等学校

今年顧問が転勤となり指揮者が変わりました。課題曲は全体的にまだ発展途上にあるという印象で、まとめきらないうちに本番を迎えてしまったという感じだったのが残念でした。このバンドの特徴は非常にきらびやかな金管サウンドのようですが、ネリベルの選曲はそれを充分に生かすものだったといえるでしょう。ただ、全体を通して、音の処理がやや粗雑な印象を受けたのが残念でした。今後はこれに豊かな木管サウンドが加わってくれば、更に深みのある音楽を演じることが出来るようになるのではないかと思われます。その辺のところを新しい指揮者に期待しましょう。

以上金賞団体のプチ感想でした。代表団体のみなさんの九州大会でのご活躍をお祈り致します。

以下、福岡県代表校のプログラムです。

北九州市立高等学校(指揮: 土谷眞史)
課題曲4:マーチ「青空と太陽」(藤代敏裕)
自由曲:交響詩「ローマの祭」より1.チルチェンセス 4.主顕祭(O.レスピーギ/藤田玄播)

都築学園福岡第一高等学校(指揮: 山崎毅)
課題曲5:躍動する魂〜吹奏楽のための(江原大介)
自由曲:地の精のバラード(O.レスピーギ/木村吉宏)

福岡工業大学附属城東高等学校(指揮:武田邦彦
課題曲4:マーチ「青空と太陽」(藤代敏裕)
自由曲:組曲展覧会の絵」よりプロムナード〜こびと〜古い城〜バーバ・ヤガーの小屋〜キエフの大門(M.P.ムソルグスキー/石津谷治法)

福岡県立修猷館高等学校(指揮:西嶋克豊)
課題曲4:マーチ「青空と太陽」(藤代敏裕)
自由曲:ウィンドオーケストラのためのマインドスケープ(高昌帥)

福岡県立小倉高等学校(指揮:木村慶子)
課題曲5:躍動する魂〜吹奏楽のための(江原大介)
自由曲:楽劇「サロメ」より7つのヴェールの踊り(R.シュトラウス/近藤久敦)

精華女子高等学校(指揮:藤重佳久)
課題曲4:マーチ「青空と太陽」(藤代敏裕)
自由曲:華麗なる舞曲(C.T.スミス)

大牟田高等学校(指揮:川口春生)
課題曲4:コミカル★パレード(島田尚美)
自由曲:シダス(T.ドス)

中村学園女子高等学校(指揮:石坂久)
課題曲4:マーチ「青空と太陽」(藤代敏裕)
自由曲:バレエ音楽「シンデレラ」より(S.プロコフィエフ/小長谷宗一)