平成21年度 東京都大学吹奏楽コンクール

今日は、夕方の仕事までの間、東京都吹奏楽コンクール、大学の部の予選を聞きにいきました。
例年は江戸川で開催されていましたが、今年は府中の森芸術劇場での開催です。
その中から代表校の感想などを、出演順に少し。

まずは、午前中に出演した立正大学
指揮は、一般の部等でおなじみの佐藤正人氏です。
毎年堅実なサウンドで身の丈に合った選曲と共に堅実な演奏を聞かせる団体です。今年もにご多分に違わず、指揮者が慣れ親しんでいる天野氏のエクスピエイションと課題曲5番の組み合わせ。いわゆる「堅実」な演奏と解釈で無難に代表権を獲得しましたが、長年聞いている者としては、何かひとつ突き抜けるようなものがそろそろ欲しいかなという感じもしてしまいます。選曲なのか、サウンドの再構築なのか・・・・ひとつのポジションを維持する事も大切ですが、音楽的な冒険の旅に出ることも、学生時代には大切な経験のひとつではないかと思います。

午前中からもうひとつでた代表団体は、創価大学
指揮者は創価関西時代からダイナミックな音楽を創る、磯貝富治男氏。87年のアルメニアンの戦列な印象は今も脳裏に残っています。今回の選曲は課題曲5番と指揮者の手慣れた楽曲のひとつ「ダフニスとクロエ」。例年マーチを選んでいたと思いますが、今回はまだ課題曲5番を自分たちのサウンドに昇華するに至っていなかったのは残念でした。一方で自由曲は、さすがに手慣れたこなれた演奏という印象。やや情景描写が単色になってしまっていたのが残念でしたが、音楽的な展開とダイナミックなサウンドのコラボレーションは、実に鮮やかでした。やや、管楽器と打楽器のバランスに再考アリかな?

続いて午後の部から、玉川大学
例年ふんわりとしたサウンドで、真面目で一直線な音楽が好評を得ているバンドという印象でしたが、今年はサウンドに硬質な部分も加わって、より音楽に説得力が加わってきた感じでした。課題曲4番冒頭のファンファーレからその変化は確実に聞いて取れました。自由曲は、このバンドお馴染みのティケリ作品「エンジェルズ・イン・アーキテクチャー」。建築学の天使達?という感じなのでしょうか。これまでのティケリ作品の中でも、流れや音楽の波が感じられる佳曲のひとつです。それにサウンドの変化も手伝って、音楽全体が安定していたのが印象的でした。

そして駒澤大学
ここ数年東京都代表をコンスタントに取り続けているバンドですね。このバンドはその揺るぎないサウンドと、非常に立体的な音楽構築が特徴で、この部分に関しては他のバンドの追随を許しません。今回の選曲は課題曲4番と「ダフニスとクロエ」。このバンドのフランス近代ものとしては85年のドビュッシーの海が非常に印象的でした。さて、今日の演奏はその揺るぎないサウンドは健在でしたが、ややバランスの悪さも目立ちました。たとえば、課題曲冒頭のファンファーレがいまひとつ透明感に欠けていたのと、課題曲自由曲を通じて、中音域を担当する金管、主にユーフォが気合入りすぎで、時に主旋律を遮ってしまっていたのは非常に残念でした。自由曲でもユーフォやホルンの和声で、そこまで表に出さなくても・・・・という部分があったのも事実です。非常に高いレベルの中での注文ですが、都大会では更に完璧な音楽に巡り合いたいものです。それにしても自由曲の終盤はフルオケを感じさせるようなサウンドも垣間見られ、オーディエンスのアドレナリンを最高潮に導くには余りある音楽のシャワーだったと思います。

もうひとつ、指揮者が交代した中央大学
去年までの小塚氏から、今年は、佐川聖二氏に指揮者をバトンタッチ。選曲は、課題曲5番と、アーノルドの交響曲4番でした。課題曲は締まりのいいサウンドで堅実な感じはしましたが、ややサウンドの変化が乏しく、まだ楽曲がこのバンドのサウンドに浸透しきっていない感じでした。管楽器と打楽器が違うを音楽を奏でていたような感じ・・・・みたいな感じでしょうか。自由曲も指揮者の手慣れたアーノルド作品という事で、安定感のある音楽でしたが、ここでもサウンドがやや色彩感に欠けていたのが残念でした。指揮者が交代して音楽的なアプローチは変わったようでしたが、その音楽を演じるサウンドに、更にバリエーションやダイナミズムが加わっていけば、今後更に飛躍的に成長して行くのでは・・・・と思わせる演奏でした。

この他、代表には東海大学が選ばれていますが、仕事の都合で、ここまで聞くことは出来ませんでした。残念。東京都の本選で、課題曲4番と指揮者の定岡氏自身のアレンジによるティル・オイレンシュピーゲルを聞けるのを楽しみにしていたいと思います。

というわけで、4時頃までいろんな団体の演奏を聞きましたが、総じて全体のレベルは高く、サウンドも年々素晴らしいものに変化している団体が多かったようです。そんな中で自由曲はどの団体も自分たちのサウンドを十分に生かす選曲で楽しませてくれましたが、課題曲で、代表団体との大きな差がついたように思われます。
にしても、毎度言われている事ですが、この中から、1団体しか代表になれないとは・・・・。
なんとかからないものかという思いは、年々強くなって行きます。そして、私たちオーディエンスにそう思わせてくれる各大学のレベルの高い演奏に、感謝したいと思います。