東京都吹奏楽コンクール・大学の部

8月に予選を抜けた団体による東京都の本選が行われたので、府中の森芸術劇場に足を運びました。
札幌は肌寒かったのに、東京はまだまだ暑いですね。

さてさて、まずは午前中に行われた大学の部。
今年も代表権を手にしたのは、駒澤大学でした。
課題曲4番はお得意のマーチ。予選の時には、ユーフォのオブリガード等、ややバランスに疑問がありましたが、今日の演奏でのバランスはほぼ完璧。終始堂々と安定した推進力のあるマーチでした。譜面に描かれた数々の要素も過不足なくしっかりと再現されていたのはさすがです。ただ時折バッキングのハーモニーにやや濁りが見えたのが残念。この辺りの精度はしっかりと高めてもらいたいものです。自由曲はラヴェルのダフニスとクロエ。以前にドビュッシーの海を取り上げた時に、「えっ、駒澤がフランスものを・・・・」と思ったものですが、今回もその時と同じく、駒澤らしさという個性とフランスらしさのコラボレーションが非常に表情豊かな世界観を作り上げていました。デュトワモントリオール版はコーラスが使われていますが、今回の駒澤は一部にコーラスを入れていましたが、弦バス以外は弦楽器のない吹奏楽でフランスものを演じる時のひとつの方法論なのかも知れません。抑制されたハープの使い方も効果的で、全員の踊りではブラスの細かいタンギングも心地よく、ラヴェルが思い描いた爆発的な歓喜のクライマックスに、駒澤大学なりの解答を提示できた演奏だったと思います。

続いて、代表は逃したものの金賞を受賞した創価大学
課題曲5番は非常にクリアな音像の引き出しが、効果的でした。点と点がつながって点線となり、聞く側の脳内でひとつのフレーズとなって行く今回のこの楽曲ですが、その解釈や演出方法は無数にありそうで、どの方法論を取るのか、各団体非常に悩んだことでしょう。その中でも、クリアでわかりやすい演出方法を選んだのは、このバンドの重厚なサウンドを考えると、正解だったのではないでしょうか。終盤も管楽器と打楽器のバランスが絶妙で、安定感のある音楽でした。自由曲は駒澤大学と同じダフニスとクロエ。冒頭の夜明けの部分では、ハープがやや音量過多で、木管楽器で表現するはずのせせらぎ的情景を演出できなかったのが残念でした。またフランスものは縦割りを維持しながらも、もっと横揺れ感が欲しかったなと思います。しかし、奏者の技術力も指揮者の音楽作りも見事で、次の段階に進めないのは、非常に勿体ない、高いレベルの演奏でした。

その他、銀賞だった中央大学。今年から指揮者が交代したということで、コンビネーションはこれから構築して行くのでしょうが、今回は管楽器よりも打楽器の音量が過多で、朝一番ということもあったのが、バランスの悪さがやや目につきました。今後は各楽器のサウンドのバリエーションに幅ができると、飛躍的に音楽が進化するのでは・・・・と思わせてくれました。

そして東海大学、課題曲5番はこの硬質なサウンドを持つバンドに合ってましたが、時おりやや作為的な演出が見られたのが個人的には残念でした。自由曲は、冒頭こそやや不安を感じさせましたが、曲が進むにつれて圧倒的な合奏力を楽しませてくれる演奏でした。

また銅賞でしたが、玉川大学は、いつもながら独創的な自由曲でオーディエンスを楽しませてくれましたし、立正大学は、非常に緊張感を保った弱奏の美しさを魅せてくれました。相対評価なので、必ず銀賞銅賞が出てしまいますが、絶対評価ならば、6大学全てに金賞をあげてもいいんじゃないかと思わせる程の熱演を今年も楽しませてくれたことに感謝したいと思います。