2009年九州吹奏楽コンクール・高校の部

昨日に引き続いて、今日は九州吹奏楽コンクール高校の部を聞きに、福岡サンパレスに行ってきました。
全国大会出場経験バンドや経験指揮者が乱立する中で、3団体が推薦されるという激戦区のひとつです。

その中で、見事3年連続出場を勝ち取ったのが精華女子高等学校
見事にバランスの取れたファンファーレからスタートした課題曲でしたが、予選時に比べると、音楽がやや冗漫に聞こえたのが残念でしたが、マーチとしての推進力や全体の構成感は見事でした。更に管楽器の存在感が前面に出てくれば鬼に金棒となるのでしょう。そして圧巻だったのは自由曲。この曲も予選から聞かせてもらっていますが、この日の華麗なる舞曲は、一本の筋がしっかりと通ったサウンドと音楽でオーディエンスを魅了しました。細かいフレーズの立体的な動きと大きなフレーズのうねりのコラボレーションが見事でした。小さな綻びはまた次へのポジティヴな宿題。文句なしの3年連続代表権獲得です。

続いて、2年連続の全国大会出場を決めたのが、鹿児島県代表、原田学園情報高等学校
課題曲のオープニングはバランスは取れていましたが、ややせせこましい感じがしたのが残念でした。全体を通して速いテンポでのマーチとなりましたが、しっかりと付いて行った奏者のスキルアップぶりに感動しました。それにしてもサウンドはよく整理されていて、音楽がストレートに伝わってきます。自由曲も同じで、やりたい事が非常に素直にストレートに伝わってくる展開が圧巻でした。県大会で見られたような綻びもしっかりと修正して来たのはさすがです。2年前に1年生だけの部員でスタートしたバンドですから、お馴染みの顔がズラリです。普門館では昨年よりもまた一周りも二周りも成長した姿を披露してもらいたいものです。

そしてもう1団体、九州代表となったのは、沖縄県コザ高等学校。2年前でしたか、鹿児島県の文化ホールで朝一番の出演ながら、鮮烈なローマの祭を披露してくれたのを覚えています。課題曲は豊かで艶のあるファンファーレでスタート。全体的に沖縄バンドの特徴である肉厚なサウンドが印象的でした。後半のスネアの処理は若干疑問符でしたが、全体を通して、オーソドックスなマーチを聞かせてくれました。自由曲でもそのバランスのいいサウンドが印象的でしたが、ダブルリード楽器にやや不安が感じられたのと、後半、打楽器が全体のバランスを崩していたのが残念でした。それにしても沖縄から九州代表が出るのは、20年以上ぶりとのこと。そしてコザ高校は全国初出場になります。中学でも沖縄旋風が吹き荒れましたから、コザ高校も普門館で、沖縄サウンド復活の狼煙を上げてくれる事でしょう。楽しみです。

その他の金賞団体の感想を少し。
まずは、福岡第一高等学校
九州のコンクール史の中でも、長きに渡ってトップクラスに君臨し続ける学校ですが、今年から課題曲5番が高校でも選択できるようになって、おそらく5番を選んでくるだろうと真っ先に連想したのがこのバンドでした。その演奏は水を得た魚のように活き活き感を持ったもので、緊張感の演出もお見事でした。中盤以降、管楽器と打楽器のコラボにもっと細かいバランスの配慮が欲しいなと感じられたのが残念でしたが、総じてソツのない音楽に仕上がっていたと思います。自由曲も高い技術力に支えられて、サウンドの清涼感と映像的立体的な音楽表現など、また新たなこのバンドの方向性を見せてくれたと思います。ただ、時折音量を出すことを意識してか、楽器の容量を超えたサウンドが音楽全体の軌道を外れるように聞こえてきた部分が残念でした。しかし、非常に質の高い音楽を残してくれたと思います。

続いて、鹿児島県立松陽高等学校
昨年は重量感のあるサウンドというイメージでしたが、今年は繊細なサウンドを作り上げてきました。しかし、点と点が飛び交いながら点線となりやがて線を描いていく課題曲5番を演じるには、ややサウンドが繊細すぎたかも知れません。またサウンド面だけでなく、音楽的な表現という部分でのアグレッシブさが、この課題曲5番の場合には、もっともっと欲しかったような気がします。演奏するという技術力は非常に高いだけに、その域まで達することが出来なかったのが残念でした。一方で自由曲のダフニスとクロエでは、この繊細なサウンドが細かいフレーズのひとつひとつを隅々まで聞かせるのに成功していました。次々に浮かんでは沈んでいく要素の数々を非常に映像的に再現していました。惜しむらくは、中域を担当楽器が、サウンド的にやや薄かった部分でしょうか。繊細な映像の下に、重厚な基盤が築き上げられれば、更に質の高い音楽になったことでしょう。今後は、この美しい響きを崩すことなく、サウンドのレンジを広げて行って欲しいものです。とはいえ、非常に流麗な空間をしばし堪能させて頂きました。

そして午前の部のもうひとつの金賞バンドは、福岡工業大学附属城東高等学校
ブラスサウンドの輝きに定評のあるこのバンドですが、今年は予選から、木管の響きの美しさと表現力の豊かさにを堪能させてもらいました。しかし、この日はそうした木管の響きがやや乾燥気味で本領が発揮できなかったような気がします。そのせいもあってか、金管木管ブレンド、そして管楽器と打楽器のブレンドがいつものこのバンドらしからぬもののように感じられました。しかし、そんな中でも圧倒的なサウンドシャワーは健在で、他の学校とほぼ同じ人数でありながら、決して楽器の許容範囲を超えたものではない音の集合が、どうしてここまで巨大なものになるのか・・・・非常に希有な存在のバンドではないかと思います。ダブルリード・ブラザーズの非常に美しいサウンドの饗宴も、お見事でした。

さて、後半の金賞団体の中からまずは、出水中央高等学校
このところコンスタントに九州大会に出場するようになったバンドですが、常に上位にランク付けされるバンドとしての総合力の高さを持っています。今回も課題曲自由曲を通じて、非常にバランスの良いサウンドが印象的でした。すべての楽器が破綻することなく、常に重量感と明瞭感のあるサウンドを維持していくのはお見事でした。ただ、やや音楽が作為的になる部分がみられたのが残念。県大会の時は、非常にオーソドックスな音楽を進行させていたような気がしますが、この日は時折表現に不自然さを感じたのは私だけでしょうか。しかし、もちろん質の高い演奏を披露していたのは間違いありません。そしてトランペットのハイトーンの美しさは大会髄一でした。次どんな音楽に挑戦して来るのか、楽しみです。

続いて、九州大会の常連校のひとつ、大牟田高等学校
時に、爆音の大牟田と言われたこともあるこのバンドですが、今年は課題曲2番と自由曲のシダスで、これまでとは異なるアプローチを見せてくれました。予選のときは不明瞭だった課題曲のマーチでしたが、この日は、非常にクリアに素材のひとつひとつを見せてくれたのに感動しました。一見簡単なようで、一度完成を見た曲の中でバンド全体のサウンドを修正するのは、非常に根気とパワーのいる作業です。そして自由曲のシダスも、弱奏部分の音楽作りなど、このバンドの新たな一面を見せてくれたような気がします。ただ後半、やや暴走気味になってしまったのが残念でした。しかし、これを契機にまた新たな音楽作りにチャレンジして行ってくれるのではないかという期待感をもたせてくれる演奏でした。

さて、こちらも年々その存在感を大きなものにして来ている、福岡県立修猷館高等学校
このバンドのマーチはいつもハイテンションで躍動感にあふれていますが、今回もご多分に洩れず、非常に華やかなマーチを演じていました。しかし、そんな中にも細やかなフレーズの処理など、更なる追求が欲しかったような気がします。自由曲のマインドスケープは、予選時とはガラリと変わったアプローチで来ました。そういう意味で非常に個性的なものを感じたのも事実ですが、部分的に不自然なフレーズ感が見られたのが残念でした。しかし、中間部の木管サウンドは神秘的ながらも重厚で、特にクラリネットスキルアップぶりが窺い知れました。全体を通しての緊張感の持続も見事で、集中が途切れなかったのはさすがです。

そして最後の金賞団体は、玉名女子高等学校
課題曲自由曲を通じて、力ずくで音楽を強引に演じていこうという部分が随所に見られたのは残念でした。このバンドは管楽器そのものが非常にボリューム感のあるサウンドを元々持っているので、そうした素材を駆使してより音楽的なアプローチを試みれば、ガラリと変わった音楽作りが出来るのではないでしょうか。打楽器の使い方も、音量をあげるためのものではなく、音楽的なエッセッスとしてどうブレンドさせて行くか・・・・というようなアプローチが欲しいと思います。しかし、非常に高い技術力を持った奏者たちを率いる先生は、幸せだなという印象を持ちました。

というわけで、2009年九州吹奏楽コンクール九州代表団体は、福岡、鹿児島、沖縄から選出されました。

福岡県代表 精華女子高等学校吹奏楽部 (指揮:藤重佳久) 金賞代表
課題曲4:マーチ「青空と太陽」(藤代敏裕)
自由曲 : 華麗なる舞曲(C.T.スミス)

鹿児島県代表 原田学園鹿児島情報高等学校吹奏楽部 (指揮:屋比久勲)金賞代表
課題曲4:マーチ「青空と太陽」(藤代敏裕)
自由曲:交響曲第5番「革命」より 第4楽章(D.ショスタコーヴィチ/C.ライター)

沖縄県代表 沖縄県立コザ高等学校吹奏楽部 (指揮:池間洋幸) 金賞代表
課題曲4:マーチ「青空と太陽」(藤代敏裕)
自由曲 : 交響曲第3番「ドン・キホーテ」(R.W.スミス)