鹿児島県吹奏楽コンクール高等学校の部

今日は帰省ついでに(ってどっちがついでなんだか)、鹿児島県吹奏楽コンクール高等学校の部を聞きに、鹿児島市文化ホールに行きました。
まずは、代表団体の感想などを。
鹿児島県立松陽高等学校
ここ数年で様々な試練を乗り越えて来たバンドてすが、今年は2004年に引き続いて、ローマの祭りを選んできました。定期演奏会で聞いた時は、まださらったばかりの状態だったようですが、どのように変貌して来るのかが非常に楽しみでした。課題曲は数少ない1番。冒頭の弱奏部分の安定感はさすが。しかし、ちょっとしたミスが見られたのは残念でした。その後の展開は、次々に登場して来る複雑な音楽の要素のひとつひとつが鮮明にかつ音色を変えながら絡み合う感じで、個々の奏者の技量と合奏力の高さを見せつけていました。ローマの祭りは、バンダが真ん中辺りに据えられて、耳当たりは良かったのですが、サンパレスでもこの形で行くのかどうか。それにしても、このローマの祭りでのアンサンブル力は圧巻。クライマックス直前の木管のパッセージは天井から降ってくるような錯覚さえ覚えました。がしかし、細かいミスが随所に見られたのは残念。その辺りの精度を高めていけば行くほどに、輝かしいチケットは近づいて来るのではないでしょうか。

鹿児島県立大島高等学校
ご存じのように、2004年のローマの祭りで、松陽の名を全国区に導いたのが、現在のこの大島高校の指揮者。赴任から3回目の挑戦で遂に激戦区鹿児島県の代表を獲得しました。課題曲は非常に安定感のあるテンポ設定で、細かい要素を満遍なく再現するのに成功していました。所々でやや打楽器が音量過多になる部分も見られましたが、この辺はサンパレスに向けて要調整というところでしょうか。自由曲は森の贈り物。確か松陽が招待演奏になった時に取り上げていたような気がします。ということもあってか、音楽そのものが指揮者の頭の中で、ひとつの理想郷として描かれているのが手にとるようにわかる演奏でした。特に木管楽器が織りなす世界観の演出が見事で、金管楽器がそれにエッジを与えるという、非常に音楽的な作り込み方に好感か持てました。やや打楽器と管楽器のブレンド感が無かったように思われましたが、今日の自信が九州大会までに更に飛躍的な成長をもたらしてくれるのではないでしょうか。

原田学園鹿児島情報高等学校
先頃のテレビ出演の影響か、会場のあちこちで「あ、テレビの先生だ」という声が漏れ聴こえていました。さて、課題曲2番。マーチに関しては、いつもお手本以上のものを作り上げて来るのがこのバンドの指揮者ですが、特に今回の2番のマーチは、ドイツマーチという事でその本筋を捉えきれていないバンドがたくさんありましたが、そこはさすがの屋比久マジック。2番に関しては、初めてと言ってもいいぐらいのトリオらしいトリオを聞かせてくれました。しかし、なにか全体的に音楽に締まりが感じられなかったのは何故なのでしょうか。さて、自由曲は、氏が城東次第にも取り上げた、アルプスの詩。こちらも課題曲同様に、非常にレベルの高いアンサンブルを聞かせてくれましたが、やや木管楽器の音圧が弱いためか、クライマックスに向けて音楽が高揚して行く様がいまひとつ伝わって来なかったような気がしたのも事実です。さ、これが九州大会でまたまたどう化けるのか、非常に期待したいと思います。

さ、続いては惜しくも代表になれなかった金賞団体の中から・・・・
出水中央高等学校
昨年九州大会で金賞を受賞した学校が、県を抜けられない・・・・非情な激戦区鹿児島県大会を物語っているような気がします。今回の演奏で気になったのは、必要以上に音量音圧をだそうと、個々の奏者が楽器の許容範囲を超えた音を鳴らそうとしているように見えた事でしょうか。そのために、音楽の推進力に必要なエネルギーがことごとく音量の方に奪われてしまっていました。非常に技量のあるバンドなだけに、こういう展開は残念な気がします。

鹿児島県立甲南高等学校
ここも確か以前に松陽を振った事のある指揮者ですね。課題曲は非常に安定感のあるマーチで、特に後半の装飾音符の再現が素晴しく、よく練られた音楽になっていました。自由曲でも、地味にも見えるこの楽曲を確実なアンサンブルと練られたアナリーゼで、高い精度の中で再現していたのに好感が持てました。特に木管楽器の歌い方が美しさを倍増させていたような気がします。確か一昨年も聞きましたが、その成長ぶりには驚かされました。

そして銀賞ながら印象に残った団体を。
鹿児島県立鹿屋高等学校
前年までは女性指揮者だったような気がしますが、新しく赴任されたのでしょうか。伝統の厚みのあるサウンドは健在でした。まだ新たな模索を始めたばかりという印象でしたが、弱奏部分の安定度や個々の技量のアップを図れば、金賞復帰もそう遠くはないかなと思わせる演奏でした。

鹿児島県立加治木高等学校
課題曲のトリオの部分のサウンドのバランスは気になりましたが、堅実なマーチという印象を持ちました。自由曲は、セレクションものではないオペラなので、音楽が停滞する部分が多かったのも事実ですが、その集中力と、サウンドの輝きが、銀賞団体の中ても、一層際立っていました。

さ、というわけで長丁場の高校の部でしたが、代表団体の顔ぶれを見ると、弱奏の安定度、ダイナミックレンジの幅の広さ、楽器の音色に対する愛情、そして音楽への取り組み方、個々の役割の自覚度、これらのすべてがハイレベルにあった3団体が、最終的に選ばれたような気がします。
特に、強奏部分で客席を圧倒する演奏は多々ありましたが、大切なのは、不安定になりがちな弱奏部分をどこまで究極的に追求できるか・・・・ではないでしょうか。これは生身の人間が楽器を息で吹くという中で、非常に難しい事ですが、その難しい事を簡単にやってのける鍛練を乗り越えた奏者たちが、県代表を獲得したと言っていいのかも知れません。
というわけで、鹿児島県代表3団体の九州大会での活躍をお祈りします。
そして非常にスムースな運営をされた係の方々にも感謝です。