九州吹奏楽コンクール高校の部

昨日の中学の部に引き続いて、高校の部を聞きに、福岡サンパレスに行ってきました。
まずは代表団体の感想を簡単に。

玉名女子高校
課題曲4番は、ストレートな解釈で、旋律が際立った好演。ただ全体的にもっさり感が常につきまとう感じで、まだまだアナリーゼの余地ありという印象。自由曲はトランペットの音色が秀逸できらびやかな祭りを演出していましたが、随所でテンポ設定の為か音楽の処理が雑な部分が垣間見られたり、低音金管の破裂音が目立っていたのが残念。久々の全国大会出場をゲットしましたね。

鹿児島情報高校
課題曲2番は、他のどの大会で聞いたものでもない独自の解釈が秀逸。さりげなく天を突き抜けるホルンや絶妙なテンポ設定等、マーチのヤビックの本領を発揮した感じでした。また木管のトリルの後処理等、重箱の隅まで手が届いていたのはさすが。トリオのチューバサウンドが安定すれば鬼に金棒でしょう。自由曲は入りの部分にやや迷いが見えた以外は、城東時代の名演を彷彿とさせる快演。全国大会では更なる極みを見せてくれる事でしょう。

八代白百合学園高校
課題曲4番は、やや落ち着かないイントロからスタートしましたが、旋律をよく聞かせた流れのある好演でした。ただ、随所で詰めの甘い部分も見られ、更なるアナリーゼの徹底が望まれます。自由曲は終始各楽器の音が良く鳴っているという印象でしたが、更に立体的な音楽作りが出来ると、楽曲の良さがオーディエンスに伝わって来るのではないでしょうか。初出場を見事にゲットしました。

では、その他の金賞団体の感想を。

鹿児島県立松陽高校
数少ない課題曲1番ですが、各地で聞いてきた1番の中でもアナリーゼがよく出来ていた快演。各楽器の技術も非常に高く、サウンドの安定感も抜群でした。祭りも音楽の流れが破綻する事なく、クライマックスに向かって行く演出は圧巻でした。ひとつひとつじっくりと音楽の要素を積み重ねて行って作りあげられたものがあまり評価されなかったのは非常に残念です。今後は臆することなく、今の路線を更に発展させて行ってもらいたいものです。

都築学園福岡第一高校
県大会から更に驚異的な伸びを見せた感じで、課題曲はすべての要素がクリアに再現された、この日の4番の中でもトップクラスの好演でした。自由曲もサウンドに更に艶が備わった事で、R.シュトラウスオーケストレーションの持つ色彩感が見事に再現されていました。散見された発音ミスが残念。しかし、それぞれの奏者がからだ全体を駆使して、ひとつの美しい世界を作り上げようとして行く姿勢に心うたれる演奏でした。

鹿児島県立大島高校
今の指揮者になってからは、初めての九州大会登場。更に朝一という出演順ながらも、非常に爽やかで立体感のあるマーチを聞かせてくれました。自由曲は更に清涼感が増した感じで、この楽曲を演奏するにふさわしいサウンドを作り上げていたと思います。この清涼感により広いサウンドのダイナミックレンジが加われば、音楽の幅が飛躍的に拡大することでしょう。

福岡工業大学附属高校
非常に豊かで安定感のある課題曲4番でしたが、ややテンホ設定のためか、細かい部分の音処理が甘くなっていたのが残念でした。が、トリオ後のブリッジの処理等はさすがの演出でした。自由曲のローマの祭りは今回も独自の解釈を、ホールいっぱいに届くサウンドで展開していましたが、ややオーバー・アトラクションという印象も。県大会の時のような演奏がもう一度聞きたかったと思います。

福岡県立城南高校
昨年からの雪辱で一気に九州大会にまで復活した城南高校。課題曲4番は更にアナリーゼが施され、音像がクリアな快演でした。自由曲は、指揮者と奏者の音楽に対する情熱が伝わる演奏で、時にややその情熱が空回りする部分も見受けられましたが、音楽の流れの良さが、そうした部分を帳消しにしていたようでした。こうした音楽への取り組みには非常に好感が持てます。

というわけでザッと印象に残った団体について書いてきましたが、今回の大会ほど、自分の感想と結果が噛み合わなかったのは初めてでした。なので、今回は単なる個人的な戯言という事になってしまったという事でご容赦を。
今年の評価基準は去年までと一変したと思いますが、やはり金管楽器の奏者が多いせいか、ブラスサウンドがバリバリと良く鳴っているバンドが高評価を受けていたような気がします。にしても、26団体の18団体が金賞受賞という、1980年の全国大会のような結果になってしまいました。

さてさて、この日は昨日に引き続いて精華女子高校が3年連続出場の特別招待演奏を行いました。圧巻はやはり、ルイ・ブルジョアの賛歌による変奏曲でしょう。そのサウンドは、それまでの精華サウンドから更に進化して、中低音が唸りをもって押し寄せてくる、まさにアメリカのミリタリー・バンドのような重量感を持ったサウンドでした。
今年の冬には、ワシントンで空軍バンドと共演し、そのままシカゴのミッドウェストバング・クリニックに移動するとのこと。このサウンドを10代の女子高生が生み出している事にアメリカのオーディエンスも感嘆し、狂喜乱舞するのは間違いないでしょう。