東京都吹奏楽コンクール中学高校の部

東京都吹奏楽コンクール、中学の部と高校の部を聞きに、東京普門館に行ってきました。
前日、仕事からの帰りがかなり遅くなったために、中学の部は、プログラム4番から聞きました。
では、代表団体を中心に感想などを。

羽村第一中学校
課題曲3番はやや不安のあるスタートでしたが、音楽の輪郭部分はしっかりと保った感じの演奏でした。圧巻だったのは自由曲。指揮者自らのアレンジによる演奏で、サウンドのバランスも素晴らしく、適度な緊張感を最後まで保つのに成功していました。4年ぶりの全国大会登場です。

玉川学園中学部
課題曲1番の冒頭から、独自の世界を作るのに成功していました。全体的に課題曲の仕上がりがおろそかだった中学の部にあって、このバンドだけは取り組み方が別格だったような感じです。非常にストーリー性を持った音楽に仕上がっていました。自由曲でも、弱奏部分のハーモニーの安定感等が抜群で、クライマックスに向かう部分では、完全に音楽の中に引き込まれてしまいました。オーボエ等ダブルリードの音色も中学の部の中では出色でした。圧巻の演奏での5年ぶりの代表権ゲットです。

今年の中学の部は、代表権を獲得した2団体と、その他の団体の間には、やや大きな開きがあるかな、という個人的な印象を持ちました。まずは課題曲の仕上がりがまだまだ途上にある団体が殆どで、やや拍子抜けの感がしたのも事実です。しかし、そんな中でも、今年都大会に初めて駒を進めた学校を中心に、キラリと光るサウンドを自由曲で聞かせてくれたバンドもあり、そうした中での切磋琢磨に期待したい所です。部員確保が大変な学校も多いようですが、少人数の場合はそれに見合った選曲や取り組みも必要ではないでしょうか。

さ、つづいて行われたのは、激戦区の高校の部。まずは代表団体の感想から。

都立片倉高校
予選でも感じましたが、課題曲5番のリズムの取り方にやや難があるかなという印象でしたが、クラシック畑の審査員は、その辺はやや弱い部分かも知れません。しかし全国に向けてはまだこうしたリズムに対する研究の余地ありという感じでした。自由曲は、ダフニスとクロエでしたが、記憶にあるこのバンドのサウンドよりは、ややサウンドに歯抜け部分があるかなという印象でした。演奏技術は高いのですが、ラヴェルの持つ絶妙なハーモニーをしっかり再現出来ていたかというと、少々疑問ではありました。が全体としての音楽の流れはさすがのものです。

東海大学付属高輪台高校
鋭角的なサウンドを持つ団体が多かった後半の中で、非常にマイルドでありながら、しっかりとエッジを持ったサウンドに大きな安心感を憶えた課題曲でした。このステージを良く知っているのか、音量も度を越えることがなく、しっかりと音楽を奏でる最適なボリューム感を維持した好演だったと思います。課題曲のラストは全国の舞台でリベンジ、でしょう。自由曲は、リコーダーのアンサンブルも美しく、全体を通して、ほぼ一糸乱れぬ技術力の高さを誇っていました。音楽の流れもスムーズで、今日1日のすべての演奏を通じても、クォリティの高い音楽を聞かせていたと思います。見事昨年の雪辱を果たしました。

ではその他の団体の感想を、まずは金賞団体から。
駒澤大学高校
昨年全国大会で久々に金賞を受賞したバンドですが、課題曲2番はアナリーゼが非常に素晴らしく、立体的な音楽を構築するのに成功していました。自由曲のローマの祭りは、予選の時とは別バンドのような仕上がりで、このバンドの技術力の高さは勿論のこと、ストーリーを持った音楽を作り上げるのに成功していました。音楽の流れもスムーズで、高校の部の中では、最もオーディエンスの心を掴んだ演奏だったと思います。欲を言えば、サウンドに更なる艶が欲しかった感じでしょうか。しかし、代表団体と遜色の無い演奏だったと思います。東京代表2枠というのは、厳しいですね。

八王子高校
課題曲1番のエンディングが持つ世界感と、自由曲プラハの為の音楽が持つ緊張感を見事に融合させた12分間でした。しかし、自由曲においてややサウンドの色彩感が乏しく、特にユニゾンにおいては終始サウンドに変化が無かったのが少々物足りない感じでした。そういう曲なんだと言われれば、それまでですが。しかし、そんな中でも、楽器間のバランスの変化等で色彩感を出せば、メッセージを損なうことなく音楽に潤いが出るのではないかと思います。打楽器の連打においても然りでしょう。しかし、技術力の高さは素晴らしいバンドです。

続いて銀賞団体から。
東海大学菅生高校
このバンドのサウンドのまろやかさと、音楽心にはいつも心打たれます。去年もプログラム1番だったと思いますが、今年も1番。非常に推進力のあるマーチと、潤いのあるダフニスとクロエを奏でてくれました。銀賞でしたが、質の高い銀賞だったと思います。東京大会は相対評価で賞が決まるので、厳しいですね。

玉川学園高等部
久々の東京都大会登場ではないでしょうか。課題曲自由曲を通じて、金賞団体に肉薄するか、それ以上の美しいサウンドを聞かせてくれました。課題曲においては、シンバルの取り扱いがやや疑問符で、もしかすると思い切って買い換えた方がいいかも知れません。全体を通じて、ハーモニーが非常にクリアで、来年以降の更なる活躍が楽しみなバンドです。

修徳高校
その解釈や再現において中々クリアな回答が出て来ない課題曲3番ですが、このバンドの解釈と再現力は秀逸でした。楽器間の目まぐるしいフレーズの受け渡しも非常にスムースで、音楽の流れもスムーズだったと思います。自由曲は緊張感を持った好演でしたが、指揮者の振りにも、課題曲とは異なる緊張感の演出が欲しかったところ。終盤サウンドが開ききってしまったのは残念でした。しかし、着実にステップアップしているバンドのひとつです。

都立杉並高校
課題曲の冒頭から木管の豊かなサウンドが響いてきましたが、やや楽器に息を吹き込み過ぎかなという場面も見られました。また特に自由曲においては、ザッツやアンサンブルの乱れやズレが散見され、かつてのような鉄壁のアンサンブルが見られなかったのは残念でした。次に期待したいところです。

都立小山台高校
課題曲5番は、ややアナリーゼ不足かなという印象。まだまだ音楽的に整理できたはずです。自由曲では後半にサウンドが開いてしまったのが残念でした。しかし、重厚なサウンドといい、奏者達の高い技術力といい、公立高校とは思えないクォリティの高さを誇るバンドです。個人的にこういうサウンド、好きです。

というわけで、レベルの高い演奏が次々と登場する高校の部は、アッという間に時間が過ぎてしまいました。客席も例年に比べると、大部マナーが向上して来たかなという印象でしたが、どうでしょうか。たまたま自分の周りだけの事でしょうか。
そんな中で演奏が終わって余韻が消えないうちのブラボーがあったりというのは、コンクールという場では、やや残念な気もしました。拍手が始まってからでも充分ではないかと個人的には思います。