2011年吹奏楽コンクール福岡支部大会

連休の初日に福岡でミーティングがあった事もあって、そのまま滞在して、吹奏楽コンクール福岡支部大会を聞いてきました。
代表校等の感想を簡単に書いておきたいと思います。

福岡工大附属城東高等学校
課題曲1番、そして自由曲のダフニスとクロエを通じて、非常によく楽譜を楽譜以上にさらっているな、という印象でした。が、一方でたとえば主旋律と対旋律が譜面通りに奏でられているにもかかわらずいまひとつブレンドしない、一体化しないという印象があったのも事実です。そういう意味でやや粗雑な印象も受けました。今後、ひとつの音楽にどうまとめ上げていくのか、楽しみにしていたいと思います。
福岡第一高等学校
課題曲4番は、非常にきらびやかなサウンドで、ドライブ感豊に仕上げていました。自由曲の交響曲矢代秋雄)は、サウンドが課題曲のそれを引きずっているという感じで、楽曲のもつおどろおどろしさや、後半の鋭角的な展開がうまく表現しきれていなかった印象でした。また、時折ピンポイントを外す楽器も見られ、音楽的な緊張感が持続しない部分も見受けられました。これからの更なる習熟度に期待したいところです。
精華女子高等学校
3出休み開けはなかなかコンクールのペースを掴むのが難しいと言われていますが、課題曲4番を聴く限りは、そんなことを微塵も感じさせない、アナリーゼの良く施された名演でした。ただ、この曲のトリオはどのバンドもまだまだ悪戦苦闘しているようです。自由曲は、宇宙の音楽に再チャレンジ。今回はコラールの部分もしっかりと聞かせる構成と演奏で、技術的にもレベルの高さを感じました。やや低音不足かなという印象もありましたが、演奏を重ねるごとに増幅されて行くのでしょう。
大牟田高等学校
マーチを得意とするこの学校による課題曲4番は、ドライヴ感を伴った心地よい音楽に仕上がっていました。が、旋律と対旋律との絡み等、やや粗雑な印象を受ける部分があったのは残念でした。自由曲は、このハンドとしては意表を付いた、トスカ。前半の重厚なサウンドはこのオペラの世界観を良く出していましたが、後半はやや息切れしたのか、音楽的な場面転換が思惑通りには行かなかった印象でした。
中村学園女子高等学校
冒頭から聞いてきて、このバンドの課題曲4を聞いたときに、楽曲のアナリーゼの大切さを改めて実感しました。同じ曲を同じ高校生が演奏しても、アナリーゼの善し悪しで、全く違った楽曲に聞こえてくるから不思議です。自由曲は、マノン・レスコーの栄版。楽譜に詰まっている要素をしっかりと演奏しながら、主旋律が全面に出てくる処理の仕方は流石です。その一方で、トゥッティにおけるサウンド処理の甘さは、残念でした。
筑紫台高等学校
課題曲4番のイントロで、このバンドのサウンドが急速に進化したのがわかりました。非常に安定した、サウンドの明るいマーチでしたが、時折ブレやズレが散見されたのは残念でした。自由曲は、ローマの松。冒頭部分の緊張感から、終盤にかけてのダイナミックレンジの広いサウンドによる音楽作りは、個人的に非常に好感を持ちました。この音楽的な輪郭を維持しながら、内声部の扱いや、細かい部分の詰めが今後は望まれるでしょう。
福岡県立修猷館高等学校
課題曲1番は、非常にレンジの広いサウンドによるイントロが心地よい演出でした。ドライヴ感もあり、マーチとしての完成度の高さも感じられましたが、時折音の後処理に雑な部分が見られたのは残念でした。自由曲はダフニスとクロエ。夜明けの部分は、ややサウンドが乾燥気味で、ラヴェルが描きたかった艶やかな色彩感が感じられなかったのは残念。全員の踊りでは着実に積み上げて来た技術力を感じましたが、後半はやや息切れする部分も見られました。
福岡県立城南高等学校
課題曲4番はよくアナリーゼされた好演でしたが、時折ピッチにブレが感じられたりした部分があったのは残念でした。しかし、サウンドはクリアで、ドライヴ感のあるマーチでした。終盤の打楽器とのハランスは一考アリでしょうか。自由曲は、ダンスムーヴメント。この人数で演奏するにはオーケストレーションが薄いのではないかとも思いましたが、ハーモニーの安定度も高く、今後どれだけ音のすき間を詰められるか・・・・期待していたいと思います。

その他、福岡県立香椎高等学校が代表権を獲得しましたが、残念ながら演奏を聞くことが出来ませんでした。

通して聞いてみて、代表常連校とそれ以外のバンドとの大きな差は、課題曲のアナリーゼ力の差でしょうか。冒頭部分を聞いただけで、その他のハンドとの違いは歴然です。音楽への飽くなき取り組みの深さの違いが、音楽になって現れて来るという事です。もちろん、そうしたバントは、自ずと自由曲の完成度も高くなります。

そんな中で、代表権は獲得できなかったものの、春日高等学校の演奏は課題曲自由曲を通じて、よく研究された、クリアで豊なサウンドによる音楽作りが印象に残りました。特に課題曲終盤のコラボレーションは心地よく、自由曲の技術力も高いものを見せていましたが、終盤の音楽作りにもう一工夫欲しいところでした。
また、去年注目した朝倉高等学校は、今年はやや音楽的に粗雑になっていたのが残念でしたが、ここも潜在能力の高いバンドです。こうしたハンドにひとつでも多く出会えるのを、今後も楽しみにしたいと思います。