東京都吹奏楽コンクール一般の部予選

土曜日曜と、江戸川区総合文化センターに、東京大会一般の部予選を聞きに行きました。
例年は西新井で行われていましたが、今年は江戸川。大編成バンドにとっては、余裕をもって音楽に対面出来た・・・・・でしょうか。
では代表団体の感想を。

創価グロリア吹奏楽 897点
2日間を通して群を抜いた名演でした。他の全てのバンドが、音楽が一塊になって流れて来るのに比べて、このバンドは課題曲の冒頭から、楽器のサウンドの分離が良く、音楽が立体的に構築されているのが、明快な演奏でした。それに加えて、個々の奏者の技術的なレベルの高さもあって、全く異質の空間を作るのに成功していたようです。また、5番を取り上げた殆どのバンドが苦労していた前半のチューバとスネアのコラボレーションもお見事。自由曲の冒頭こそ、サウンドのバランスに繊細さを欠いていましたがこのバンドにとってはケアレスミスの範囲でしょう。時折ハーモニーに違和感を感じる部分もありましたが、アレンジのせいでしょうか。いずれにしても、今後更にどう進化修正されて行くのか、非常に楽しみです。

東京隆生吹奏楽 842点
登録メンバー数より結構少ないかなという感じでしたが、課題曲の冒頭はゴージャスなイントロでスタート。しかし、全体的にサウンドが艶不足で、マーチの明るさにかけていたという感じでしょうか。ブラスサウンドも全体的にストレートなのが気にはなりました。そんな中、音楽的な作りあげ方はさすがで、アナリーゼも程よく施された好演でした。自由曲のカルミナも卓越した演奏力と、トランペットのきらびやかなサウンドが心地よく響いていましたが、全体的に高校の延長的な感じという印象でした。内声部の更なる充実に大人の色気みたいなものが加わると、また別の意味でのゴージャス感が備わるのではないかなと思います。

豊島区吹奏楽 836点
指揮者が代わってこれで何年目でしょうか。今回の演奏は指揮者と奏者の一体感が素晴らしく、また高音を集中的に鳴らすバンドが多い中、重心を低く据えていながらもダイナミックレンジの広いサウンド作りが個人的に非常に壺でした。また緊張感の持続が難しい課題曲3番において、サウンドのブレがほぼ皆無だったのも好印象でした。自由曲は小倉朗の作品のアレンジ。今のこのハンドのサウンドを非常に生かした、骨太で輪郭のハッキリした音楽でした。ただ、サウンドの色あいの変化に乏しいという印象があったのも確かで、シーンと共にサウンドにも変化があると、音楽がより説得力あるものになることでしょう。

ミュゼ・ダール吹奏楽 834点
かつては爆音系の代表格だったこのハンドも、非常に音楽的な演奏をする存在になってきました。このバンドは音楽の要素のひとつひとつがフワリフワリと浮かんでくるように聞こえて来る部分に、非常に心地よいものを感じます。課題曲5番、前半のチューバとスネアのコラボはもう一息でしょうか。全体を通して、確実に譜面を再現しているという印象ですが、その要素がひとつの音楽に昇華されないまま終わってしまった印象でした。サウンド的にも音楽的にも更なるブレンド感が欲しいところです。自由曲も、非常に高い理解力で音符を再現していますが、音楽としての整理がまだ最終段階に来ていないかな、という印象でしょうか。画竜点睛に期待です。

大江戸シンフォニックウィンドオーケストラ 829点
きらびやかなファンファーレでスタートした課題曲4番でしたが、マーチにおける裏打ちのリズムが不安定だったりする等、まだまだやるべきことは多いかなという印象でした。また旋律がやや無愛想な面持ちで、大人のバンドの色気が無いかな・・・・というイメージでしょうか。またハーモニーにおける濁りの解消も課題です。自由曲はセルゲイ・モンタージュ。個人個人の演奏力は高いなという感じですが、バンドという集合体の不可欠なプラスアルファを見つけ出す作業が必要かも知れません。しかし、何度聞いても不思議な曲です。

NTT東日本東京吹奏楽 828点
今年の課題曲3番は、冒頭の発音の正確さ、ブレの無さで明確に差がついてしまいますが、この日の演奏はそこがやや不安定で、ブレが感じられたのが残念でした。また全体のサウンドもやや不鮮明なせいか、楽曲が進むにつれて、登場して来る要素や内声部の動きも不明瞭になっていました。サウンドをクリアにするのか、内声の動きを明確に導き出すのか・・・・修正が求められるところです。自由曲では、力業満載の楽曲の影響もあって、やや靄が晴れたかなという印象でしたが、今本原因の根治は必要かも知れません。

Soul Sonority 827点
非常に堅実な演奏するバンドという印象ですが、全体的にサウンドの精度が悪く、譜面が明確なマーチにおいては、バンドとしての弱点に油を注ぐ形になってしまっていたようです。ひとつひとつ丁寧に積み重ねあげる作業は大人になっからも大切なポイントです。自由曲は、課題曲に比べると非常に完成度はアップしていました。サウンドの分離が良く、音楽を構成するひとつひとつの要素が明瞭に主張していたのが好印象でした。ただ全体的に、もっとメリハリがあってもいいかなという印象です。

Tokyo StackArt Wind Ensemble 823点
指揮者が代わって2年目になりますが、骨太で安定感のあるサウンドは健在です。課題曲5番においては、やや音楽作りが平面的なのが気になりました。音量や音色の変化による細かいバランス取りが望まれるところです。しかし、演奏力の高さはさすがです。自由曲は、非常にメリハリのある演奏でしたが、やや打楽器が存在感過多な部分が見られたのは残念でした。また、中低音の音程が更に明瞭になると、音楽が安定するでしょう。もう少し点数が出てもいいかなという印象でしたが・・・・。

デアクライス・ブラスオルケスター 820点
課題曲4番は、オープニングこそ華々しくスタートしましたが、トリオのテンポ設定といい、マーチの完成度といい、本番前の練習を聞いているような感じでした。予選用の演奏というわけではないのでしょうが、去年の代表バンドらしからぬ課題曲でした。自由曲においても、個々の奏者の演奏力の高さを見せてはいましたが、仕上げはまだまだこれからという感じでしょうか。本選での完成度の高い音楽に期待したいところです。

足立吹奏楽 820点
課題曲1番は非常に堅実な印象を受けるマーチでしたが、更にウキウキ感が伝わるような音色の工夫等、音楽的な演出が欲しいところでしょうか。トリオも含めて、終始同じサウンドカラーで終わってしまった感じでした。自由曲も同じで、やはた堅実さは出ていましたが、大人のバンドならではの遊び心も欲しいところでしょう。

東芝府中吹奏楽 816点
課題曲はややサウンドが不明瞭なせいか、焦点の定まらないマーチになっていました。またメリハリはついているのですが、発音が不明瞭不安定な楽器が散見されていたのが残念でした。自由曲はサックスの流麗なアンサンブルからスタートしましたが、まだまだ完成度はこれから高められる余地あり・・・・そんな印象です。

東京シティブラスオルケスター 813点
課題曲3番の冒頭は、もう少し緊張感が欲しかったところですが、弱奏のハーモニーの安定感は抜群でした。しかし、その後は音楽の構成が不明瞭になってしまっていたのが残念。より突っ込んだアナリーゼが望まれます。そんな中、個々の楽器の音色の美しさは光りを放っていました。自由曲でも、奏者の技量が非常による引き出されていましたが、サウンドブレンド感が加わると、音楽が活きて来る、そんな印象でした。しかし、点数的にはもっと出てもいいのかな、という感じでした。

というわけでこの12団体が東京代表を競うわけですが、今度は会場が府中になります。今回の江戸川とは全く響きの違うホール。
今回とはまた違った音楽に出会えるのではないか・・・・そんな期待を持っていたいと思います。
暑い中、みなさんお疲れさまでした。