2011年吹奏楽コンクール東京都予選・高校の部

お盆の真っ最中、12日午後と14日午前、吹奏楽コンクール高校の部、東京都の予選を聞きに行きました。
会場は、府中の森芸術劇場です。その中から、代表団体の感想などを書きたいと思います。

東海大学高輪台高等学校
課題曲の冒頭から、この日の午後最もダイナミックレンジの広い豊かなサウンドが会場に響きわたりました。前半の低音群とスネアのコラボレーションは、スネアがやや焦り気味に聞こえていたのが残念。全体のリズムのうねりの中にうまく溶け込む演出が欲しかったところです。中盤以降は、一体感も見られて来ましたが、ハーモニーが更にクリアになると、シーンが鮮明になるでしょう。自由曲は、「イーストコーストの風景」改め「東海岸の風景画」。冒頭の木管のパッセージは、もっと繊細に合わせてほしいところ。ペットの旋律も、東海岸ならではのクリアさが欲しいところでしょうか。しかし、ここでも重心を低く設定した豊かなサウンドと、合奏力の高さは群を抜いていました。オーケストレーションの薄っぺらなこの楽曲を、ここまで重厚に聞かせる技はお見事です。

都立杉並高校
この学校ならではの豊かな木管の響きは、時代を経ても健在で、課題曲5番が、全く違う楽曲に聞こえて来るこのバンドの個性は心地よさ全開です。前半の低音群とスネアのコラボレーションも、ほぼ完璧に近い再現力を見せていました。ただ全体通して、サウンドの変化に都欲しいのも事実で、今年もこの辺りが次の段階へとシャンプアップする為の課題となるでしょう。自由曲の「ばらの騎士」でも、豊な木管サウンドを最大限に生かしていましたが、こうはんはやや息切れしたのか、ハーモニーに濁りが見えたり、細かいフレーズが曖昧に聞こえていたのが残念でした。よりクリアな音楽へのアプローチが望まれるところでしょう。

駒澤大学高等学校
課題曲冒頭のティンパニはややぎこちなさを感じましたが、その後は非常にダイナミックで豊かなサウンドが会場に響きわたりました。音量も充分にありますが、決してうるさくないのが、このバンドの強みなのでしょう。前半の低音群とスネアのコラボは心地よかったのですが、チューバの発音が不明瞭な部分があった為か、うまく音楽が流れていかなかったようでした。またこの会場においては、打楽器のバランスがやや過多だったようです。自由曲はスペイン狂詩曲。冒頭、ハープに頼ったり、木管の細かいフレーズがクリアさを欠いていたりしたのが残念でしたが、全体を通して、細かい要素を残らず(ファゴットを除く)再現したいたのはお見事でした。ただ、ラヴェルのハーモニーをより心地よく演出する為には、ブラスサウンドに艶のある部分も必要かも知れません。

東海大学菅生高等学校
やや華やかさを欠いたファンファーレからスタートした課題曲4番でしたが、マーチのアンサンブル力はお見事。ただ、冒頭のクラリネットの旋律は、そこまで息を吹き込まなくても・・・・という感じではありましたが。多くのバンドが不安定さを露呈するトリオも、サウンドのバランスが良く、ハーモニーもクリアな躍動感をもったマーチでした。自由曲のカバレリアは、艶やかな木管サウンドを持ったこのバンドに合った選曲でしたが、全体を通して、サウンドの色彩感の変化に乏しく、音楽が平面的になってしまっていたのが残念でした。しかし、アンサンブル力の高さは、さすがです。また、本気で取り組んでいたコーラスの美しさもお見事でした!

日本大学豊山高校
まずは課題曲5番の立体的な音楽作りが、東京の高校予選を通じて、最もツボにハマった演出でした。その後の低音群とスネアのコラボレーションには、もっと繊細さが欲しいところ。そんな中でも、内声部のハーモニーの導き方等、非常に心地よいものをじさせてくれました。よくアナリーゼが施された好演だったと思います。重心を下においたサウンドの安定感もお見事でした。トゥッティにおけるハーモニーが更にクリアになると、完成度が更に高まるでしょう。自由曲のシダスは、課題曲に比べると、ハーモニーのバランスの取り方や、各楽器の発音の正確さの追求等々、まだまだ改善の余地はあると思います。しかし、終始安定したサウンドの持続力と、楽曲に華を添えていたホルンの見事なサウンドは、お見事でした。

私が予選で聞いた代表団体の演奏は以上5団体でしたが、普門館での本選には12団体が登場します。ホールの響きは、今回の府中とは全然違ってくるという事で、ぞれぞれのハンドがどんな音楽に仕上げて来るのか、またフラットな気持ちで、聞かせて頂きたいと思います。
猛暑酷暑の中、お疲れ様でした。