2011年東京都吹奏楽コンクール中学高校の部本選

韓国出張より帰国した翌日、中学高校の本選を聞きに、東京普門館に足を運びました。朝早い時間から、これまでに見たことも無いような行列が出来ていました。
では、金賞バンドを中心に感想などを。

都立片倉高等学校 金賞代表
普門館常連のこのバンドでも、やはり朝一番の時間ではサウンド・ハーモニー共にクリアになりきらない部分はあったものの、課題曲自由曲を通じて、粒立ちのよい演奏技術と重厚感溢れるサウンドはさすがに秀逸でした。木管金管そして打楽器とのバランスもアンサンブルの緻密さも申し分なく、特に自由曲はその世界観を見事に再現していました。そして指揮者がジャンプしても、奏者は全くブレない、音楽への集中力の高さには脱帽です。更に音楽を奏でる事の楽しさが伝わって来るといいかな、というのは贅沢な欲求でしょうか。

東海大学附属高輪台高等学校 金賞代表
恐らく都大会を通じて最も垢抜けたサウンドと音楽性を持つこのバンド、課題曲5番は全ての要素がクリアに再現され、ダイナミックレンジの広いサウンドも、決してうるさくならない絶妙なさじ加減で、客席超満員となった高校の部のトリを見事に締めてくれました。自由曲のイーストコーストの風景は、この楽曲への先入観を覆す名演。木管の細かいパッセージには更に精度を求めたいところですが、「音楽が活きている」のがこのバンドの最大の長所でしょう。ハーモニーが更に明るくなると、鬼に金棒でしょうか。

駒澤大学高等学校 金賞
サウンドの重厚さ、ハーモニーのクリアさ、音楽性の高さは常に都大会トップクラスをキープしていますが、更に木管金管サウンドブレンド感が加われば、恐らくは東京都の高校最強バンドになるのではと、いつも思うのがこのバンド。大きな原因はブラスサウンドがストレート過ぎる部分でしょう。個々の演奏技術も高く、しっかりとアナリーゼされた音楽の再現力の高さも秀逸ですが、音楽的サウンド的な画竜点睛を期待したいところです。

都立杉並高等学校 金賞
木管楽器サウンドに定評があるバンドですが、やはり午前中の早い時間もあってか、課題曲5番の冒頭はややクリアさを欠いた音楽になっていました。また、予選の時のような緻密なアンサンブルが今回は影をひそめていたのは残念です。しかし一方で、自由曲「ばらの騎士」の音楽作りは圧巻で、選曲がこのバンドの長所を最大限に引き出すのに成功していました。これにサウンドのクリアさが加われば、更に説得力が増した事でしょう。

以上が今年の金賞バンド。おなじみの顔ぶれですが、普門館が超満員となった聴衆の期待以上の演奏を繰り広げていたトップクラスのレベルの高さには脱帽です。4団体全てを全国大会に出してあげたいほどの完成度とクオリティの高さを堪能させて頂きました。また、上位4団体全てが課題曲5番というのは、東京ならでは、というところでしょうか。

ところで、都大会は相対評価なので、各賞の団体数は決められているわけですが、そんな中で銀賞ながら、課題曲4番のマーチの完成度の高さと自由曲の感銘度の高さが秀逸だった、東海大学菅生高等学校も金賞にしてあげたいほどの音楽を轟かせていました。

さて、午後に行われた中学の部は、近年稀に見る激戦区となりました。
そんな中で、サウンド、演奏力、音楽力、全てにおいてバランスの良さを持っていた、小平市立第三中学校と、金管楽器の集中力の高さが秀逸だった、羽村第一中学校が代表権を獲得しました。羽村第一中学校は全国大会に向けて、木管楽器の強化が今年も課題になるでしょうか。小平三中はダフニスとクロエでの代表獲得ですが、中村・平井コンビはこれで今年、3つの団体をダフニスとクロエで全国大会に導いた事になります。

また、代表権は逸しましたが、昨年の全国大会金賞バンド、玉川学園はダブルシャコンヌを安定したハーモニーで聞かせましたが、音楽の持続感が見事な演奏でした。サウンドのバランス感も申し分無く、個人的には最も楽し見せてもらった演奏のひとつです。また、足立区立第十四中学校小平市立第6中学校も、課題曲3番と共に、演奏技術と質の高い自由曲を聞かせていましたが、やはり課題曲3番でのアピール度に欠けてしまったようです。が、いずれにしても、金賞5団体、全てが全国大会レベルを持つという、非常に充実した時間を堪能する事が出来ました。
ただ、全体の出場団体数の関係もあるのでしょうが、本選としてはやはり12団体ぐらいが適度ではないかなという勝手な印象も持ったりしました。
それにしても、高校中学大学一般全ての部門に、さまざまな個性を持ったバンドが犇き合う都大会は、今最も面白い支部大会のひとつでしょう。金賞バンド演奏会なんてのを開いてくれたら、面白いかも知れませんね。リラックスした彼らの演奏も聞いてみたいものです。
というわけで、今年も楽しい時間をありがとうございました!