2013年九州吹奏楽コンクール高等学校の部

連日の猛暑記録を行進する九州博多。
その博多のベイサイドにある福岡サパレスに、九州吹奏楽コンクール高等学校の部を聞きに行きました。
開場前から、海っぺりまで人の列列列。人気の高さが伺えます。

それでは当日聴いた演奏の中から、感想などを。まずは代表団体。

精華女子高等学校
はじけ飛ぶようなイントロからスタートしたマーチの4番。よどむことの無い躍動感と、各声部の輪郭がクッキリとした演奏でした。トリオの部分にもう少し繊細さが加わると、音楽が更に立体感を持つことでしょう。全国大会での最後の仕上がりが楽しみです。自由曲は、このバンドにしか出せないグルーブ感とドライブ感を持った演奏でした。随所で珍しいミスが散見されましたが、この段階で出たのを幸いとすべきでしょう。終演後は、この日一番長くて大きな拍手喝采を巻き起こしました。審査員も開場のオーディエンスも、満場一致で認めた九州代表という感じだったでしょうか。

鹿児島情報高等学校
ここ数年精華と共に九州の顔になりつつある、いやもうなってしまったと言ってもいいのがここ、鹿児島情報高校。そして精華とは正反対の音楽を演じます。課題曲2番の冒頭、やや不安を感じるものがありましたが、マーチに入ると、もはや独壇場。楽譜に忠実に、誠意のある音楽を紡いでいく、そんな冷静な演奏でした。自由曲は、pppからfffまでを幅広く使い、「高校生の段階で将来美しい音楽を奏でる為に習得すべき基礎」をしっかりと生徒たちに伝授している、そんな演奏だったと思います。また情報高校も珍しくハーモニーにブレを感じる箇所がありましたが、次の段階ではすべてクリアして来る事でしょう。

沖縄県立コザ高等学校
課題曲の冒頭を聴いた瞬間金賞を確信させるクリアなサウンドと音楽でした。弱奏においても強奏においても、サウンドやハーモニーがブレる事なく、適度な前進感を持ったマーチを披露していました。自由曲も、弱奏部が美しく、個々の楽器のサウンドが安定している事を物語っていました。ただ全体的に音楽が平面的で、音楽的な個性みたいなものが感じられなかったのは残念。サウンドや技術が伴った段階で、音楽を聞く人々にどう料理して伝えて行くのか・・・・そこまでのアプローチには至ってなかったようです。それは次の段階への宿題となるのでしょう。

続いて代表にはなれなかった金賞受賞校。
鹿児島県立松陽高等学校
これまでのこのバンドのイメージは高い技術を控えめに鳴らして、美しさをアピールする、というものだったように思いますが、今年の演奏は課題曲の冒頭から、客席に迫り来る音楽の波を感じさせるものでした。ただそのアプローチの中で、金管楽器の音色が本来の美しさを失っていたのは残念でした。しかし、問題意識がわかった今、次の段階に向けてこのバンドが大きく成長し成熟するのは早いだろうなと実感させる演奏でもありました。自由曲は、木管楽器の美しさを誇る名演。そういう美しい音楽という点では、九州の高校の中でも髄一のものを感じさせます。願わくば、九州にもこんなに美しい木管の響きを持ったバンドがあるという事を全国に向けて発信してほしかったところですが、それは来年への新たな課題となったようです。余りある繊細さに更に大胆なものが加わったとき、どんな音楽になるのか、そんな期待を持たせる今年の演奏でした。

さてさて、26校中、4校が銀賞という厳しい結果でしたが、銀賞バンドに見られた共通点をいくつか。
まずは、特にマーチの課題曲において、旋律が時折埋もれてしまう演奏だ多かったという事。対旋律とのバランスや、バンド全体の中でのバランス等、より繊細なアナリーゼとアプローチが求められます。また、特に強奏において、サウンドやハーモニーが破綻するバンドが殆どでした。また音楽が平面的なバンドが多く、なぜ複数の要素がその音楽にはあるのか、そのひとつひとつの要素をどのように登場させるのか、作曲者はどう登場させて欲しいと願っているのか、九州大会のようなレベルになると、そこまでのアプローチも必要なものになって来ます。そういう部分で、ここ数年で殆どのバンドが音楽的に退化してしまったような印象を受けたのも事実です。コンクールが終わり、また新たな世代が新たな時代を作って行く事になると思いますが、こうしたことも考えながら、音楽作りに励んで頂きたいなと思います。