2014年鹿児島県吹奏楽コンクール高校の部

25日、26日と2日間にわたって開催された、鹿児島県吹奏楽コンクール高校の部を聞きに行きました。
まずは代表校の感想などを。

鹿児島県立松陽高等学校
去年から課題曲をマーチに設定していますが、非常にクリアで重厚なサウンドを持っているバンドなので、気持ちに余裕を持って吹ける選択は、長丁場のコンクールシーズンを考えると、最適な選択でしょう。今回の4番も冒頭からしっかりとアナリーゼされたクリアな音楽を展開していました。そんな中でチューバが微妙にピンポイントを外すのが勿体なかった感じです。またトリオ後、テンポダウンしてしまったために、マーチとしての前進力が失われてしまったのは残念でした。自由曲は、今年のこのバンドのサウンドに最適な選択で、終始、その技術力の高さと、締まったサウンドによるクリアな音楽が心地よく響いてきました。前半部分はもか少し音楽的な色気を持ったほうが良かったかも知れません。終盤は圧巻のアンサンブルでしたが、サウンドの色彩感に変化が出てくると,音楽がより立体的になるのではないでしょうか。

出水中央高等学校
非常に洗練された技術を持ったバンドです。課題曲2番は、ここも余裕を持って音楽を展開していましたが、全体的にバンドがひとつの歌真理となって前に進んでいる印象で、場面ごとにサウンドに色付けがなされると、より音楽がクリアになるでしょう。スネアの三連符がやや重く聞こえるのも残念でした。しかし、全体を通して非常にバランスのとれたサウンドを聞かせていました。自由曲は、冒頭のリコーダーから、非常に美しい音色と安定したハーモニーが心地よい好演でした。そんな中で、トゥッティにおいて、時折サウンドが開いてしまうのは要注意でしょう。久々の九州大会への出場です!

鹿児島情報情報高等学校
課題曲2番の冒頭から、屋比久先生が構築した中低音が安定したサウンドが、指揮者が交代しても健在なのに安心しました。そんな中、マーチがやや走り気味で、全体を通してせわしなく聞こえていたのは残念でした。また旋律と対旋律の絡みなど、更なるアナリーゼも望まれるところです。自由曲においても、重量感のあるサウンドは心地よさを放っていましたが、柔らかいサウンドとエッジのあるサウンドの対比がやや曖昧な感じで、音楽が時に平面的になってしまったようです。しかし、ここの奏者のサウンドの安定感が心地よい、トゥーランドットの世界を作り上げていたと思います。

今年の鹿児島県代表は以上の3校に決まりました。続いて、その他の金賞校です。

鹿児島県立大島高等学校
課題曲2番が抜群の名演でした。しっかりとアナリーゼが施された音楽と、安定したマーチ、場面ごとにしっかりとサウンドの色合いを変えていく演出もお見事。トリオで若干サウンドが薄くなり過ぎた感があった以外は、旋律の聞かせ方も絶妙で、ほぼ完璧な2番を会場いっぱいに轟かせました。さて、自由曲。前半の弱奏の安定感はお見事でした。が、主顕祭では、若干のサウンドの芯の弱さを露呈してしまったようで、楽曲をコントロール出来ないまま、フィナーレへとなだれ込んでしまった感があったのが残念でした。やはり、余裕を持って凌駕出来る楽曲の選択というのも、こうした激戦区においては、ひとつの大きなポイントとなるのではないでしょうか。

神村学園高等部
ここ数年、いつも書いているような気がしますが、技術を持った奏者が集まる中で、更にクリアなサウンド作りを、このバンドには求めたいところです。課題曲はマーチングでも有名校なので、しっかりとした足取りのマーチを今年も聞かせてくれました。が、自由曲はやや難易度が高すぎたのか、このバンドも自由曲を余裕を持って凌駕するにはいたっていなかったのが残念です。数年前に聞いた「英雄の生涯」のような、バンドに見合った選曲というのも求められるのではないでしょうか。

鹿児島県立甲南高等学校
課題曲4番の冒頭は、気品のあるイントロで、マーチもテンポ感の安定した心地よい世界観を作っていました。ただ、音楽の構成がやや平面的で、終始一段となって前進していた感があったのが残念です。自由曲樹は冒頭から前半部分、やや苦戦していましたが、終盤の重厚な中にもエッジのあるサウンドと音楽作りは圧巻で、ハープの使い方など、非常にバランスの取れた、極上の音楽に仕上げていました。

鹿児島県立鹿屋高等学校
非常に美しい音楽作りをするというイメージを持っている、ここ数年の鹿屋高校ですが、課題曲4番の冒頭はやや粗雑な扱いになっていたのが残念。その後の木管の旋律など、ハーモニーと旋律の歌わせ方の美しさは健在です。ただ、時にテンポが遅くなり、時にテンポアップするなど、マーチとしての推進力にブレが見られたのは残念です。自由曲は、このバンドのサウンドの美しさ全開という感じでしたが、こうした楽曲ではビブラートの巧みな使い分けというのも、場面によっては求められるところでしょう。しかし、今年も美しい音楽の世界を堪能させて頂きました!

鹿児島県立武岡台高等学校
昨年から急速に頭角を表してきた感のあるバンドです。課題曲4番の冒頭はレンジの広いサウンドが心地よく響いていましたが、木管のピッチが若干不安定だったようで、旋律がやや埋もれ気味になってしまったのは残念でした。また全体を通して見られた発音ミスも、丁寧な修正作業を施してほしかったところです。自由曲は、このバンドにエッジの効いたサウンドにマッチした好演でした。ただ、全体を通して、やや打楽器が暴走気味で、その辺りのバランスには気を使って欲しかったところです。しかし、このバンドはまだまだ過渡期。今後の更なる伸びを期待しています!

それにしても、代表団体枠が3つというのは、鹿児島県にはかなり厳しい狭き門ですね。そんな印象が更に大きく感じられた高校の部でした。