吹奏楽コンクール鹿児島県大会高校の部

blueoceans122006-08-01

鹿児島県大会も今日で最終日。印象に残った団体の感想を。

まずは、加治木高校。朝一番ながら、課題曲冒頭の入りの部分を非常に安定したサウンドでスタート。が、直後の2度にわたるアンサンブルの乱れが非常に残念。しかし全体を通して、よくアナリーゼされた音楽的な演奏を展開していた。自由曲も、映像感をもった表現力で音楽が展開されたが、このサウンドでのフォルテッシモが聞きたいなという欲求が最後まで満たされなかったのが残念。これだけの音楽的な表現を、よりダイナミックレンジの広いサウンドで聞きたいものだ。

続いて、川辺高校。課題曲の冒頭から重量感のある豊かなサウンドが心地よい。が、総じてmf以上のサウンドが鳴りっぱなしという感じは否めなく、音楽的な表現の幅が狭くなってしまっていたのが残念。また、管楽器と打楽器のバランスも、もうひとつ。パーカッションも含めて個々の技量は高く、より表現力が高まれば、もっと深みのある音楽になるだろうと思われる。

つづいて、午後一番の出水中央高校。去年より人数も増えたサウンドは、エッジの利いたメリハリのある心地よいサウンドだった。演奏そのものも、高い技術に支えられた的確なものだったが、木管金管のバランス、また管楽器と打楽器のバランスが悪く、音楽の輪郭がすっきりとしなかったのが非常に残念。特に打楽器の必要以上の強打には気をつけていただきたいものだ。指揮者は鹿児島の吹奏楽シーンの歴史を担って来たベテランの方だと思われるので、この辺りの建て直しが図られれば、格段にバンドとしてのレベルはアップすることだろう。しかしいずれにしても今後最も期待のもてるバンドのひとつであるのは間違いない。

続いて川内高校。先生もメンバーも、曲についてよく研究した演奏だな、という印象を受けた。サウンドのボリューム感も程よく、終始心地よい音楽を聞かせてくれた。ただ、その分聞いた後に、もうひとつ残るものが無かったのが残念。曲を理解する段階を超えたら、次はそれをどう印象的にオーディエンスに伝えるか、というアプローチに移って欲しいと思う。こちらも、今後に非常に期待したいバンドのひとつである。

続いて、川内商工高校。指揮者は、一般の部で宮之城を振られている幸喜先生。課題曲の冒頭から、まだまだ個々の楽器のサウンドが出来上がっていない印象を受けた。特に今年の1番は、それが如実に出てしまう。更なるサウンド作りが望まれる。さて自由曲は、ジャズテイストを持った選曲。ドラムセットを叩く生徒の4ビートが非常に安定しているのが心地良かった。この曲のリズムを一手に引き受けた感じだ。願わくば管楽器がこのドラムビートにしっかりと付いて行って欲しかったのだが、やはりここでもサウンドの弱さが足を引っ張った結果となった。しかし、気持ちよく4ビートに乗ろうという姿勢に拍手。

そして、松陽高校。同じ50人なのに、なぜか1割り増しぐらいに見えるのは、配置の妙なのだろうか。この時点で、すでに他を圧倒するが、いざ音楽が始まると、2〜3人で演奏しているのでは・・・・というほど、音楽がひとつにまとめられているのは感嘆に値する。これは課題曲においても自由曲においても同じで、終始一貫して確固たる音楽にまとめ上げて来た成果だろう。ただ、中域の内声部において、やや不安定な部分がいくつか見られたのだけが残念。このあたりが九州大会までの課題なのだろう。しかし、他を寄せ付けない圧倒的な名演だった。

続いて、伊集院高校。母校なので、期待して聞いたが、課題曲では、随所にアンサンブルの乱れが見られたのが残念。また、楽曲に応じたサウンドの変化があってもよかったのではないかと思われる。そんな中でトランペットソロの音色が非常に心地よく、このサウンドをもっと生かした演出を考えても良かったかなと思われた。

続いて、神村学園。このところの代表常連校で、全国にも出場したバンドだが、課題曲の冒頭から、アナリーゼ不足を感じさせる演奏だった。導入部も不安定で、やや、らしからぬ演奏に終始してしまった。自由曲は、個人的には、選曲ミスではないかとも思ったが、後半になるにつれて、中低域の骨格が鮮明になってくる感じで、前半が今日は不調だったのかどうなのか、九州大会のステージで、それは確認することにしようと思う。しかし、サウンドの安定感はさすがで、管楽器中心のシンフォニックな音楽は心地よかった。

トリは、鹿屋中央高校。このバンドもここ数年の代表常連校。が、ここも神村学園同様、今日の演奏は不調に終わった感じだった。課題曲は管楽器と打楽器のバランスが悪く、自由曲も、このバンドなら余裕に演奏できるだろうと思われる楽曲にやや振り回されてしまうような出来だった。常連としての油断があったのかどうなのか、昨年は鬼気迫るハリソンに感動させてもらっただけにやや拍子抜けしてしまった。九州大会では今日の出来を覆す名演の誕生を期待したい。しかし、こちらも全体としてのサウンドの安定感はさすがで、音楽を安心して聞けるのがいい。

高校の部代表校
鹿児島県立松陽高等学校吹奏楽 (指揮 : 立石純也)
課題曲 1: 架空の伝説のための前奏曲(山内雅弘)
自由曲:楽劇「サロメ」より七つのヴェールの踊り(R・シュトラウス/小澤俊朗)

神村学園高等部吹奏楽 (指揮 : 久木田恵理子)
課題曲 3: パルセイション(木下牧子
自由曲:交響詩英雄の生涯」より(R.シュトラウス/引坂浩史)

前田学園鹿屋中央高等学校吹奏楽 (指揮 : 谷口修美)
課題曲 1: 架空の伝説のための前奏曲(山内雅弘)
自由曲:管弦楽組曲「第六の幸運をもたらす宿」 (M.アーノルド/瀬尾宗利)

金賞
国分中央、鹿児島東、加治木女子、鶴丸玉龍、加治木、川辺、鹿児島、鹿屋、出水中央、川内、国分、松陽、伊集院、鹿児島南、神村学園鹿屋中央
銀賞
出水、種子島、大口、指宿、鹿児島工業、奄美、加世田、徳之島、鹿実、岩川、中種子、甲南、志布志、樟南、武岡台、川内商、鹿児島中央、大島
銅賞
錦江湾、樟南二、出水商